聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

北朝鮮で核実験が行われる可能性あり

北朝鮮の核問題に対してなかなか有効な手が打てないうちに、いつの間にか状況が緊迫化している。
ルーガー米上院外交委員長(共和党)は8日、CBSテレビに対し、北朝鮮が核実験の準備をしているとの観測について「(核実験を)するかもしれない」と述べた。
ルーガー氏は「米情報機関は、トンネルの封鎖作業や、見たことのない不思議な兆候があることに注目している。何らかの出来事に備えているかのようだ」と語り、「核実験は大激震となるだろう。限界を超える出来事だ」と憂慮を表明した。(共同通信 via NIKKEI NET 2005年5月9日)
朝鮮日報でも同じような報道がされているし、IAEAエルバラダイ事務局長も、北朝鮮は5発程度の原爆を製造可能なプルトニウムを既に保有しているとの見方を示している。

このところ北朝鮮から出てくる情報は微妙に核保有をにおわすものの、核を保有しているとの言質を与えるほど踏み込んだ内容はなかったので、私は北朝鮮はいつもの通りの瀬戸際外交を展開しているだけで、実際にはプルトニウム濃縮などはやっていないんじゃないかと思っていた。なので、にわかに北朝鮮が核実験をする可能性があるとの報道には唐突感がある。

ただ、北朝鮮が本当にプルトニウム濃縮を行っていても不思議ではないなと思ったのは次のニュース。
ロシアのプーチン大統領は9日、米CBSテレビとのインタビューで、「2、3カ国の厳しい圧力」が北朝鮮金正日労働党総書記を追い込んでいると述べ、暗に日米両国の対北強硬姿勢を批判した。(時事通信 2005年5月9日)
これまでロシアって、六カ国協議の中では主体的に何か役割を演ずるわけでもなく、良く言えば中立的、悪く言えば他人事のように振舞ってきたように思う。それなのに急に日米をけん制するような発言をしてきたということは、ロシアはロシアである程度以上に北朝鮮の現状をつかんでいて、それを対アメリカへのカードとして使おうと思い始めたのだろう。中央アジアで分が悪い分を北朝鮮で取り返そうとしているのかもしれない。

ロシアがつかんでいるような情報は当然中国も把握しているだろうから、モスクワで開かれた中韓の首脳会談などは茶番と考えて間違いない。
中国の胡錦濤国家主席と韓国の盧武鉉ノ・ムヒョン)大統領は8日、対独戦勝利60周年記念式典のため訪問したモスクワで会談し、北朝鮮の核問題を巡る6 カ国協議の再開にめどが立たないなど不透明な状況が続いていることに深い憂慮を表明した。同時に日本の歴史問題を巡っても議論し「北東アジアの平和と共同の繁栄のためには正しい歴史認識を持つことが何より重要」との意見で一致した。(NIKKEI NET 2005年5月9日)
「北東アジアの平和と共同の繁栄」に必要なのは、中韓にとって都合の良い「正しい歴史認識」などではなく、北朝鮮朝鮮半島の核保有阻止に決まっている。
日経新聞の別の記事では、中国は北朝鮮に対していらだっているようなことが書かれているが、本当にいらだっているのならとっとと北朝鮮に核開発停止を「厳命」すれば良いだけのこと。真相はそうではなく、使い古した歴史認識カードをネタにズルズルと日本をけん制し続け、北朝鮮の核開発を間接的に支援するところにある。

そんな状況を知ってか知らずか、日本政府は北朝鮮の核実験計画等については情報不足を理由に判断を保留している。でも、これって日本が北朝鮮の核問題に対して能動的にアクションを起こせないということの現れでしかないのではないか?実際に拉致問題に関する日朝交渉は再開の糸口が見えないどころか、北朝鮮側の交渉の責任者が解任されていたりと明らかに手詰まりに陥っており、何とか状況を打開したいところ。

私はこれまでは「圧力と対話」で北朝鮮をじわじわ追い詰めるのが良いんじゃないかと思ってきたが、中国・ロシアの動きを見るとその戦術はどうも限界に近づきつつあるようだ。六カ国協議にこれ以上期待するのは止めて、安保理へ付託するなど多くの国々を巻き込んだアクションに切り替えるタイミングが来たのかな思う。


[関連投稿]
着々と外堀が埋まる北朝鮮(2005年03月11日)
日本は既に北朝鮮に経済制裁していると思われているようだ(2005年2月12日)
北朝鮮自爆(2005年2月11日)
対北朝鮮強硬策実施までに考えるべきこと(2004年12月9日)