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着々と外堀が埋まる北朝鮮

2月10日に核兵器保有を宣言して以来、北朝鮮の外堀は着実に埋まりつつある。以前の投稿で書いたとおり、北朝鮮核兵器保有宣言は見事な自爆として歴史に残りそうな勢いだ。

まずは、アメリカのヘリテイジ財団がレポートを発表している。基本的にアメリカのスタンスを反映したものだが、北朝鮮に対し3月中の6カ国協議再開を要求し、実現しなかった場合、5カ国で交渉決裂の責任を北朝鮮に問う共同声明を出すとともに、EU諸国やオーストラリア、カナダのような北朝鮮と国交がある国にも働きかけて圧力をかけることを要求している。
Urge the other four parties--South Korea, Japan, China, and Russia--to convene the next round of the six-party talks in March. If North Korea does not attend, the remaining five parties should issue a statement declaring that North Korea is responsible for the impasse and proposing concrete next-step actions. These actions should include expanding the focus of diplomatic efforts from regional to international. Specifically, the U.S. should urge countries that currently have diplomatic ties with North Korea--including some European Union countries, Australia, and Canada--to sign a resolution condemning North Korea's nuclear weapons program as a dangerous and destabilizing activity and to suspend their diplomatic ties with Pyongyang until it agrees to return to the negotiation table. (Resume the Six-Party Talks - Even If North Korea Walks
この提言と呼応しているかどうか定かではないが、ASEANEUは共同で北朝鮮の6カ国協議への復帰を要求する議長声明を発表した。
東南アジア諸国連合ASEAN)と欧州連合EU)の閣僚会議が10日、ジャカルタで開催され、北朝鮮に6カ国協議復帰を要求する議長声明を発表して閉幕した。両者は会議で、テロや国境を越えた犯罪への対策で一層の関係強化を図ることで合意した。(2005年3月10日 時事)
また、北朝鮮のお膝元でも平壌に駐在する外交団が金正日総書記の誕生パーティへの参加を取りやめることを表明していたらしい。
北朝鮮が外務省声明で核兵器保有や6カ国協議の「無期限中断」を表明した2月10日直後、欧州中心の数カ国の平壌駐在外交団が北朝鮮の姿勢に不快感を抱き、抗議の意思表示として、外交団や国連機関を招いた金正日総書記の誕生祝賀会への出席を当初「見送る」と表明していたことが10日分かった。中朝関係に詳しい外交筋が明らかにした。(2005年3月10日 共同)
そして北朝鮮の親玉中国も匙を投げつつあるようだ。国連安保理の場で北朝鮮への経済制裁が提出されても反対しないそうだ。匙を投げつつあるというよりは、6カ国協議のホスト国としての面子を北朝鮮につぶされた意趣返しの面もあるのかもしれない。北朝鮮がどうなろうとも自業自得だとでも思っているのだろう。
中国政府のシンクタンク、現代国際関係研究院日本研究所の馬俊威副所長は10日、都内の日本国際問題研究所で講演し、北朝鮮の核問題が将来、国連安保理に付託され、経済制裁決議案が提出されても、中国が拒否権を行使して反対に回ることはないとの見通しを示した。(2005年3月10日 時事)
そんなこんなで、北朝鮮に対する圧力の輪は広がりつつある。国連安保理への付託まではもう一息といったところか。こうして圧力をかけているうちに北朝鮮が核の放棄を決断するとか、金王朝が崩壊したりするのが望ましい結末なのだが、そう一筋縄では行かないだろう。なぜかといえば、北朝鮮軍はまだ金正日の掌握下にありそうだからだ。北朝鮮軍周りでもう少し情報が漏れてくれば状況が変わるかもしれないが、もう少し時間がかかりそう。


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