はてなダイアラー絵本百選−てぶくろをかいに
- 作者: 新美南吉,若山憲
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 1970/10
- メディア: 単行本
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しもやけになった子キツネの手を温めるために、キツネの母子が山から人間の里へ降りてきて手袋を買いに行くというお話。いざ、手袋を買いに店に行こうという段になって、昔人間につかまりそうになったことがあるお母さんキツネは、子キツネの手を人間の手に化けさせ、ひとりで手袋を買いに行かせることにします。お母さんキツネは子キツネのことが心配で仕方ありませんが、子キツネはちゃんと手袋を買うことができるかな…。
人間が怖くて里に降りられないお母さんキツネが子供を買い物に行かせるのはどうよ?というツッコミはさておき、親の心配をよそに子供はいろんなことができるようになっているというのは、この「てぶくろをかいに」の子キツネに限らず身の回りでもよく感じます。つい1ヵ月前までおっかなびっくりで上っていた滑り台やジャングルジムでも、いつの間にやらサルのように身軽に上り下りするようになっていたり、欲求の赴くまま行動していた子供が幼稚園に入り、いつの間にか怪しいながらも行列組んで歩けるようになっていたりというのは、わが子に限らず、あまりの変化の大きさにびっくりさせられます。自分たちも通った道のはずなんですが、結局、親の方が子離れできていないんだなぁと思い知らされます。
「てぶくろをかいに」では、そんな子供の成長に対する親の認識ギャップが、人間に捕まりそうになったことがあるお母さんキツネが持つ人間に対する不信感と、上手に手袋を買うことができた子キツネの「人間ってちっともこわかないや」という人間に対する信頼感のコントラストで表されているわけですが、最近は人間の世界でも子供たちを巻き込む残念な事件が多いこともあって、他ならぬ人間の親自身が人間に対する不信感と戦いながら子育てをせざるを得ないところが実にやるせないところではあります。
「世の中には、いい人と悪い人がいる」と言うよりは、「世の中、良い人ばかりだよ」と言って子育てしたいんですけどね。