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お気楽金融雇われ人の見聞録

地味な中部国際空港が17日に開港

中部新国際空港が、17日の開港を前に皇太子殿下をお招きして記念式典を行った。
開港まであと4日と迫ったわけだが、自分が愛知県出身だということもあって、中部国際空港にはそれなりに注目も期待もしている。しかし、これまでのところ空港開港そのものより、3月から開催される愛知万博が実は「サツキとメイの家」が一番の目玉なのではないかとか、隣接する南知多町美浜町の合併協議会が発表した新市名「南セントレア市」が全国からの抗議により撤回に追い込まれたとか、周辺の話題の方に目が行きがちな地味な空港というのが正直な印象。

開港のタイミングが愛知万博の開催に近いこともあって、中部国際空港愛知万博の来場者のために作られた空港というイメージがあり、万博終了後に閑散としてしまうのではないかと人事ながら心配してはいたのだが、万博開幕間際にもかかわらず盛り上がらない名古屋の様子を伝える記事を読むと、実は主客が逆で空港を作る口実に万博を誘致してきたというのがより実態に近いのだという気がする。
『愛・地球博』開幕直前(東京新聞2005年2月13日)
愛知万博開催に地元が冷静な理由を、UFJ総研の内田俊エコノミストは「実は万博の最大のパビリオンは空港だ。空港というハードを利用してもらうソフトが万博ということになる。空港という元を取ったのだから、万博はもし赤字が出てもお釣りがくると考えれば、この地域が踊って見えない理由がわかってくる」と分析する。つまり空港という実を既に手に入れて、地元の目標は達成してしまったというのだ。
そうすると万博を口実に空港を建設したのはどういう目論見なのだろうか?

名古屋の経済界としては、おそらく旅客の面はあまり期待しておらず、内外の航空物流の拠点とすることを考えているのだろう。これは当たり前といえば当たり前の話で、中部国際空港が成田空港より都心に近くアクセスが便利だといっても、首都圏に住む人間がわざわざ中部国際空港まで国際線を利用しに来ることはいくらなんでもありえない。パンク状態の成田空港の旅客を分担することはできないだろう。京阪神の人間は既にある関西空港を利用すれば足りるので、こちらもわざわざ中部国際空港まで来ることは無いはず。利用客として見込めるのは、現在の名古屋空港の利用者数とそれほどの違いは無いだろう。

一方で、物流の拠点として中部国際空港を見た場合、関西空港と同じく24時間の運用が可能である点と、タイミングを同じくして伊勢湾岸道路が開通している効果が大きいと思う。伊勢湾岸道路は、将来的に第二東名・第二名神になる道路の一部だったと思うが、現時点でも名古屋市内をバイパスして東京と大阪を結ぶ道路としての機能があるし、トヨタの工場群がある西三河やホンダの鈴鹿などもこの道路によってアクセスが向上するはず。この正月に帰省した時に走って見たときはガラガラだったが、中部国際空港が機能し始めれば交通量も増えるだろう。

そんなわけで、中部国際空港は「セントレア」なる愛称を付けられてはいるものの、空港の存立基盤を貨物便に置く堅実だが地味な空港として機能していくのだろう。