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お気楽金融雇われ人の見聞録

北朝鮮への経済制裁

拉致問題に関する北朝鮮との実務者協議が終わった。北朝鮮からいくつか資料が提出されたが、今回も全面解決には至らなかった。北朝鮮は、拉致問題を解決に導く材料(拉致被害者の生存情報)が無いことを承知の上で、適当な材料を小出しにして時間稼ぎをしていると見るのが妥当だろう。拉致された被害者の方が生きているかもしれないと一縷の望みを託されている家族の方の胸中を思えば、拉致問題の真相究明を更にスピードアップする必要があることは言うまでもない。

今回の不本意な協議結果を受け、日本国内では、これ以上の交渉は無駄であるとして経済制裁などの強硬策を求める声が既に大きくなっている。しかしながら個人的には、今の段階で日本が単独で北朝鮮への経済制裁を発動しても、思うような効果を上げることは難しいと思う。それは、日本と北朝鮮の間の直接的なパイプを塞いでも、韓国や中国、ロシアを迂回して、モノやカネをやり取りすることができるからだ。

仮に日本が現時点で経済制裁に踏み切り、これらの国に同調を求めたとしても、彼らが歩調を合わせて北朝鮮への経済制裁に踏み切るとはとても思えない。そんなことをして北朝鮮が倒れたりすれば、難民が何百人、何千人単位で地続きである3国に殺到することが明白だからである。

そういった事情を反映しているかどうかはともかく、中国は原子力潜水艦を領海侵犯させてみたり、ロシアはプーチン大統領自らが北方領土は歯舞・色丹の2島返還で幕引きにしたいと言ってみたり、韓国に至っては休戦中の敵国である対北朝鮮上は必要も無いイージス艦の導入を決めてみたりと、日本の出方を試すような言動が続いている。そういう点に鑑みれば、中国、ロシア、韓国は、現時点では当てにできないと考えるべきだろう。(北朝鮮の難民問題は日本にとっても他人事ではない。北朝鮮難民の一部は、間違いなくボートピープルと化して日本を目指してくるはずである。)

また、アメリカもパウエル国務長官が辞任するため、今後の北朝鮮政策がどうなるか一時的に不透明である(CNNによれば、新国務長官はライス大統領補佐官が指名される見込み[11月16日])。

日本が経済制裁をちらつかせながら、拉致問題の解決に向けて北朝鮮に圧力をかけ続けることは必要ではある。ただ、歯がゆいことに日本は北朝鮮を黙らせる「力」を持っていないので、経済制裁カードだけでは北朝鮮を追い詰めきることはできないだろう。

現時点で日本は北朝鮮から足下を見られているということを良く認識するべき。その上で、今後の北朝鮮への対応を考える必要があると思う。望ましいのは、拉致問題だけでなく、核問題に絡めて世界中から圧力をかけることで、小泉首相の周辺が経済制裁に慎重なのは、拉致問題だけではなく、核問題に絡めて国連安保理に持ち込むことを視野に入れてのことと思いたい。

[関連投稿]
アメリカ、北朝鮮経済制裁に慎重姿勢(2004年12月14日)
対北朝鮮強硬策実施までに考えるべきこと(2004年12月9日)
再び北朝鮮への経済制裁(2004年11月25日)