聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

住宅公庫の焦付き債権

住宅金融公庫の焦付き債権の処理に税金が投入されることが決まった。来年度370億円を投入し、7年間かけて償却するそうな。

住宅公庫融資の返済が滞っている債務者は、当初5年間の返済額を少なくする「ゆとり返済」など1993年以降に景気対策として導入した新制度の利用者が多いとのこと。今にして思えば、借り入れ時点の返済額を少なくしておかなければ毎月の返済もままならないような人が、10年後に急増する返済額をまかなえるとは思えないのであるが、当時は比較的軽い負担でマイホームが購入できるとして、マネー雑誌などでも取り上げられていたような気がする。

将来収入が増えることを見越して、やや返済負担率が高いローンを組んでしまった方の見通しの甘さは責められる点があるとはいえ、当時はマネー雑誌や住宅雑誌などでは、民間の銀行の住宅ローンより有利なローンという扱いで、利用を煽っていたと思う。

ゆとり返済は、庶民が住宅を購入する負担を多少なりとも軽減させる狙いで実施された施策であったとは思う。しかし、少し背伸びしてゆとり返済を利用した人は、返済額の増加を吸収できるほど収入が増えなかった場合、返済不能に陥るわけで、最悪自宅を手放さざるを得なくなった人もいるはず。そうしてみると、ゆとり返済という制度は、政策としては中長期的には効果がないばかりか、逆効果になることもありうるという悪い制度だったといわざるを得ない。制度を考案した住宅金融公庫や便乗して利用を煽ったマネー雑誌等の責任がもっと問われてもいいような気がするが…。