聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

明るく前向きなビジネス小説 - 幸福な会社

幸福な会社 (徳間文庫)
阿川大樹
徳間書店 (2011-04-01)
売り上げランキング: 4044

日経ビジネスオンラインで「第三企画室、出動す~ボスはテスタ・ロッサ」として連載されていた小説の前半部分を書籍化したもの。連載当時から楽しみに読んでいたので、書籍化されないかなぁと思っていたけれど、ようやく書籍化されたので早速買ってきた。

久しぶりに通して読んでみたけど、やっぱり読んでいて楽しいな。

話の舞台そのものは、大日本鉄鋼という日本を代表する重厚長大企業が、リーマンショック以降の不景気の影響で先の見通しが悪くなったところから始まるように、手放しで明るいお話ではない。そして、局面打開の一つの方策として、スピンオフのベンチャーを作るというのも、ビジネスとして見れば必ずしも目新しい話ではない。

「個人が努力をしてもしばしば運命には逆らえないことがあるように、会社もいまある自分の土俵で頑張っても、それで将来まで安定して成長していくことができるとは限らないんだ」

という旭山の言葉は、私を含む多くの雇われ人が共通して感じていることで、まさに今の時代の閉塞感を表したものだと思う。

でも、読んでいて楽しいのは、そんな閉塞感からスタートしながらも、新しいことを始めるときのワクワク感がベースにあるところ。登場人物がそれぞれ悩みを抱えつつも、明るく前向きなところもいい。「会社上層部の腐敗と戦ってうんぬん…」みたいな話ほど陰鬱でもなければ、某ビジネス漫画みたく無駄な色気がないところもいい。

連載していたときのタイトル「第三企画室、出動す~ボスはテスタ・ロッサ」に比べると、「幸福な会社」というタイトルは、ずいぶん毒気を抜かれてしまったように思えて、その点だけは残念。旭山、風間、楠原の三人が作ろうとしている会社は「幸福な会社」そのものだというのはよくわかるんだけどね。