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お気楽金融雇われ人の見聞録

「脱原発」を進めるために無視してはいけない現実

「エネルギー政策転換」訴えるデモ行進
「(原子力は)安いと言うけど 、原発には保険はきかない。事故があると、国がつぶれるほどのコストがかかる。No more atomic anything.(もう原子力はこりごりだ)」(作家 C・W・ニコルさん)
これは、地球の環境について考える「アースデイ」にあわせて行われたものです。デモ行進では、家族連れなどおよそ5000人が「エネルギー政策転換を」などと書かれたプラカードを掲げ、渋谷駅前や明治通りなどを練り歩きました。
(2011年4月24日 TBSニュース)

福島原発の事故で一気に盛り上がったように見える「脱原発」の動き。上で取り上げられているデモ行進のような動きがしばらくは続くのかな。

ただ、原発で生産された電力を受ける側の東京では「脱原発」のデモ行進が行われている一方で、東京など都市圏に電力を送り出すための原発を抱えている自治体の選挙で示された地元の民意は「原発と共存」だったというのは、とても興味深い。

原発反対派、目立った伸長みられず
東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、統一地方選後半戦では原発が立地する自治体で安全対策や是非が争点となったが、原発反対派の目立った伸長はみられなかった。
東京電力労働組合の組織内候補も、厳しい逆風の中、開票された選挙では全員が当選した。
(2011年4月25日 読売新聞)

もちろんこの結果は、「原発があることによる雇用創出効果」とか「各種補助金」、そこから発生するいろいろな「しがらみ」が根っこにはあるのだろうけれど、本気で「脱原発」を進めるのであれば、これは無視してはいけない一つの現実ではある。

たとえば、原発を全廃して太陽光発電風力発電で代替するとして、

太陽光発電所や風力発電所を建設するためのコスト

とか

出力が不安定な太陽光発電風力発電を補うための火力発電所揚水発電所を建設するためのコスト

とか

原発を安全に止めて、廃炉に持っていくためのコスト

とか

原発を廃止したことで失われる地元の雇用補うための方策

みたいなものを目に見える形で、つまり具体的な数字をもって、議論して初めて「脱原発」が妥当かどうか建設的な議論ができると思うんだよね。

そして当たり前だけれど、これらのネタは「脱原発」を進めたいサイドで用意するべきもの。公開されている数字だけを前提に作ってみても、それなりに現実的な数字は作れるはず。

それを「原発以外のすべての発電所が『常に』100%稼動することを前提に」数字を作るような粗雑な議論を展開してしまうと、マトモな実務感覚を持った人に相手にしてもらえなくなってしまう。

ひどいのになると、東電の企業体質を「脱原発」の材料にしている議論も見かけるけれど、それは「東電が原発を扱うこと」に対する批判にはなりえても、「原発そのもの」を廃止するためには何の補強材料にもならない。

私自身は、

原発は事故が起こった時のコストが莫大なのは分かっているけど、代替エネルギー原子力をすぐ置き換えるのは無理だろうから、当面はこのままでやむを得ないんじゃない?

という消極的認容派なので、脱原発の人々の主張を多少色眼鏡で見ていることは否定しないけれど、逆に言えば、説得力のある脱原発の主張が出てくれば、簡単に意見が変わる程度の人間。

ただ、この手の人々が現時点の多数派だろうと思うので、こういう層に説得的な材料を提示できないと、「脱原発」が一時期のお祭り騒ぎで終わっちゃうことを老婆心ながら心配しております。

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