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お気楽金融雇われ人の見聞録

「ネット監視法案」とか言っちゃうのは恥の上塗りのような気がしないでもない

菅内閣が急いだコンピュータ監視法案の“本当に危険な箇所”
しかし、法案の本当の危険は別の箇所にある。「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」という長い名称と長い条文のうち、刑事訴訟法第197条に新たに加えられた「3項」を引用する。
…日本弁護士連合会国際刑事立法対策委員会委員長でネット犯罪に詳しい山下幸夫・弁護士が解説する。
「この条文は、捜査当局がプロバイダなどに対し、裁判所の令状を受けていなくても通信履歴の保管を要請できるようにするもので、当局が『あいつは怪しい』と思えば、捜査のためと称してメール履歴をプロバイダに保管要請できる。この手続きには裁判所のチェックも働きません」
だからコンピュータ監視法案、もしくはネット監視法案と見られるのである。
(2011年4月18日 NEWSポストセブン)

引用が「しかし」から始まっているのは、この法案の閣議決定が3月11日になされたことを「震災の最中にネット監視法案の閣議決定を行った。火事場泥棒だ」と書いたところが、実際の閣議決定地震発生前だったことがわかり、謝罪した上で、この部分につながっているから。

この火事場泥棒騒ぎは、本来であれば、よくある週刊誌の飛ばし記事ということで、大騒ぎにはならなかったと思うけど、twitter上で自称ジャーナリストな人が「火事場泥棒」と騒ぎ始め、いろんな人に飛び火したあげく、デマを誤報と言い繕って、ご本人の馬脚が見えた騒ぎ。

事実誤認に基づく記事を流すのは、メディアとして問題なのは否定しないけど、この事件そのものは、件の自称ジャーナリスト氏が普段声高に批判しているマスメディアと同じ行動様式を取ることが白日にさらされたということで、興味深い騒ぎではあった。

前置きはそのくらいにして本題に入ると、記事は「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」の中で改正案が出ている刑訴法197条3項を取り上げたもの。

法律案全体は、法務省のサイトに出ているから、詳しくはそちらを参照いただくとして、ポストが問題にしているのは、197条3項の案。具体的には、こんな条文案。

検察官、検察事務官又は司法警察員は、差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者又は自己の業務のために不特定若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、三十日を超えない期間を定めて、これを消去しないよう、書面で求めることができる。この場合において、当該電磁的記録について差押え又は記録命令付差押えをする必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない。

この条文案に対して、山下幸夫弁護士が、上のように否定的なコメントを出しているのだが、正直どこが問題なのかよくわからない。

確かに、条文案では捜査機関がプロバイダーに対して通信記録の消去をしないことを求めることに対して、裁判所のチェックはかからない。

でも、プロバイダーに保存させた通信記録を捜査機関が入手するには、差押えの手続やあわせて新設される記録命令付差押えの手続が必要なわけだから、その時点で裁判所のチェックはかかることになっているんじゃないの?

差押令状執行までに通信記録が流れてしまうと、せっかくの差押えが空振りになってしまう(証拠が失われてしまう)ので、それを防止するための一時的な要請、というのがこの条文の素直な解釈だと思うのだが……。

これを「ネット監視法案」とか言っちゃうのは論理に飛躍がありすぎて、「火事場泥棒」に次ぐ恥の上塗りのような気がしないでもないんだが、私の読み方が間違っているんだろうか?

捜査機関に自分のインターネット上の活動履歴を見られるのが嫌だという気持ちは分からなくも無いけれど、刑事訴訟法の手続が守られている限りは捜査機関が通信履歴を見るのは捜査上の理由がある時に限定されるだろう、とは言えるのではないかな。

ここに嫌悪感を持つ人たちは、Googleなどが検索履歴などの膨大な情報を蓄積し続けていることについて、どういう感情を持っているんだろう?その辺のバランス感が、今ひとつ理解できないんだよねぇ。

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