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SHIBUCulture中止と「俗物図鑑」

渋谷西武「性的に過激」サブカル系展覧会中止
西武百貨店渋谷店(東京都渋谷区)は2日、同店B館8階の美術画廊で今月6日まで開催予定だった展覧会「SHIBUCulture~デパートdeサブカル~」を中止した。
同展は1月25日に開幕、サブカルチャー系の国内作家25人の絵画、写真、フィギュアなど99点を展示していた。しかし、来場者から「百貨店の展覧会として、(内容が)ふさわしくないのではないか」との指摘が数件あったといい、2日の開店から別の日本画展に切り替えた。同百貨店は「見る方に性的な面で不快感を与える、過激な作品が数点あったと判断した」(渋谷店販売促進部)と説明している。
(2011年2月3日 読売新聞)

この手の性的な表現に対する制約が問題になる場面では、表現物が「わいせつ」なのかどうかということより、「見たくない人たち」と折り合いがつくかどうかの方が、重要視される傾向にあるな。

法律論的には「公共の福祉」、文学的・社会学的には「良識」と呼ばれる「見たくない人たち」の「感情」と折り合いをつけるというのは現実問題としては極めて難しい。「見たくない人たち」は妥協できないからね。

なので、「百貨店の展覧会として、ふさわしくないのではないか」という数件の指摘で、展覧会自体を中止してしまった西武百貨店の判断はわからなくもない。

けれど、『ふさわしくない』という作品を目立たないところに移設するとか、パーティションで区切るとか、折り合いの付け方は他にもあっただろうに、「臭いものにフタ」とばかりに展覧会自体を中止してしまったのは、ちょっと安直な気もする。西武百貨店は、サブカルチャーに理解のある百貨店というイメージがあったのだが、それも昔の話ということなのかな。

それにしても、東京都のいわゆる『非実在青少年』問題や今回の展覧会中止の顛末を見ていると、筒井康隆の「俗物図鑑」を思い出す。

俗物評論家(サブカル評論家)たちが、一時期メディアに乗って大いにもてはやされた後、世間の「良識」に駆逐されるまでを描いた傑作。40年近く前の作品だけど、サブカルチャーをめぐる状況は何も変わっていないことが良くわかる。

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