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小田急高架化訴訟は住民敗訴で決着

小田急線高架化訴訟で住民側敗訴 最高裁判決
東京都世田谷区内の小田急線高架化工事をめぐり、周辺住民37人が都市計画法に基づく国の鉄道事業の認可取り消しを求めた行政訴訟の上告審判決が2日、最高裁第1小法廷であった。泉徳治裁判長は、「高架式を採用した都市計画決定裁量権の範囲の逸脱や乱用はない」と述べ、住民側の上告を棄却した。(産経新聞 2006年11月2日)

小田急線の高架化の是非を争ってきた裁判が決着しました。珍しく最高裁のサイトに、もう判決文がアップされている(参照)ので一読してみました。ひとことで言うと、裁判所としては都市計画の決定(変更)は行政の裁量権の行使であり基本的に口を出さないことを改めて確認した判決だったと言えそうです。その上で行政の裁量権の逸脱や濫用があると判断する基準として、

  • 都市計画の決定(変更)の基礎とされた重要な事実に誤認がある場合
  • 事実に対する評価が明らかに合理性を欠くなど、判断の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合

という2つの類型が示されたわけですが、……「重要な事実に誤認がある場合」とか「判断内容が社会通念上著しく妥当性を欠く場合」ってどんな場合なんだろう?要はケースバイケースということで基準を示しているようで示してない判決ですねぇ。

今回の小田急高架化に関して言えば、行政の判断自身はそれなりに妥当だったと思いますし、そもそも原告住民数十名以外の沿線住民は別に高架化に反対していない(どころか多くの沿線住民は踏切がなくなることを望んでいた)こと、原告が主張していた地下化の方がコストが多くかかることなどを考えれば、もともと原告の分が悪い裁判で、裁量権の濫用うんぬんが問題になるケースではなかったわけです。

でも、都市計画に地域住民の多くが反対するような場合はどうなるんだろう?当然計画の妥当性とともに行政の裁量権が争われますよね。そういう場合に、上の基準は判断の基準たりえるのかなぁ……。はなはだ疑問ではありますね。