聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

若社長は何も知らされていなかったんだろうな

はっきりとした調べもつかないうちに「わが社は無関係」と言い切ってしまう会社で、本当に無関係だった会社が無いというのは一体どういうことなんだろうか。先月のシンドラーのエレベーター事故とまるで同じ展開をたどっているのに笑えるやら呆れるやら。

パロマ「認識が甘かった」…遅すぎた対応に遺族の怒り
事故原因を巡る新たな事実が浮かび上がった。パロマ工業製の瞬間湯沸かし器による死亡事故に関し、販売元のパロマが18日、公表した社内調査結果。事故件数が27件、死者数が20人に増えたほか、会社側が強調していた不正改造とは別に、品質の劣化が事故を招いていたことも明らかにされた。
次々と発覚する新事実に、パロマ小林弘明社長(37)は「認識が甘かった」とようやく謝罪し、父親の小林敏宏・パロマ工業社長(68)は辞任の意向を表明したが、遅すぎた対応に被害者の遺族らは憤りをあらわにした。(YOMIURI ON-LINE 2006年7月19日)

今回の事故で思ったのは、若社長(弘明氏)には何も知らされていなかったんだろうなということ。報道を見る限り事故の芽は先代の敏弘社長の時代にありそうですが、違法改造と高をくくって対応をしてこなかったようです。で、最近になって自社の責任もありそうだとなったところが、「若社長には泥をかぶらせないように」という周囲の「配慮」であんな対応を取ってしまった。結果、かえって傷口を広げてしまった。そんな印象を受けます。言ってみれば、パロマにはきちんとしたガバナンスが全く効いていなかったんでしょうね。

なぜそう思うかといえば、パロマってまず間違いなくオーナー企業なんですよね。パロマのサイトを見る限り非上場会社で、財務諸表も公開されていなければ、経営陣の顔ぶれや、株主構成なども当然のように公開されていません。そして会社の沿革を見れば分かるとおり、小林家が創業家で敏弘社長は3代目、弘明社長が4代目となっています。となれば、十中八九、小林一族がパロマの株式の大半を保有しているとみて間違いないでしょう。

そうなると、社員からみれば弘明社長は「若様」以外の何者でもないでしょう、もちろん先代社長から見ても。そういう状況で、彼のもとにマイナス情報がきちんと上がるようになっていたかどうか…。

何の裏づけもない印象論ではありますが、今回の一連の事故の詳しい状況は現場の番頭レベルと敏弘社長が握りこんで、若社長(弘明氏)には伝わっていなかったんじゃないでしょうか?前回の記者会見に出てこなかった敏弘社長が、今回息子である弘明社長の脇について一緒に謝罪するとともに、自らの辞意を示唆する一方、息子をかばっているところを見ると、さほど荒唐無稽な想像でもないように思います。