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お気楽金融雇われ人の見聞録

トヨタのリコール漏れ

リコール隠しの発覚で三菱自動車が倒産寸前にまで追い込まれたのは記憶に新しいところですが、品質には厳しいと言われるトヨタでも似たような事件があったようで、トヨタユーザーの端くれとしては気になるところ。

概要については西日本新聞が詳しいので、ちょっと長いですがクリップしておきます。ちなみに日経新聞は、これまでのところ共同通信記事しか配信していないようで、同社の体質が良く表れていて微笑ましい限りです(^^)。

トヨタ 重要故障 当初から認識 「緊急措置必要」 熊本県警調べ 副社長にも報告
トヨタ自動車の歴代部長三人が車の欠陥を約8年間放置し、5人が重軽傷を負う交通事故を起こしたとされる業務上過失傷害事件で、トヨタは1992年ごろから報告されていた部品の不具合について、3段階ある社内の対応ランクのうち、当初から最も高い「車両の重要故障で緊急措置が必要」のAランクと判断していたことが12日、熊本県警の調べで分かった。
Aランクの場合でも、同社は必ずしもリコール(無料の回収、修理)の対象とはしていないが、県警は会社として不具合の重要性を認識していたとみている。
調べでは、トヨタはディーラーなどから報告が上がる不具合について、品質保証部で対応を協議。事故(2004年8月)を起こした車種の多目的レジャー車(RV)「ハイラックスサーフ」のかじ取り装置「リレーロッド」の強度不足による破損については、当初からAランクと判断。しかし、重大な事故が起きていないとしてリコールは届けていなかった。また、品質保証部の社内調査でリレーロッドの欠陥が判明した1996年の4月と6月、製造に関する技術的問題を検討する会議で、問題のリレーロッドの強度不足が報告されていた。この会議には、品質保証部門の副社長と常務が出席していた。
会議では、多数に上る車の不具合が報告され、その1つとしてリレーロッドの強度不足についても改善部品を使用することが伝えられていた。
この会議は、リコールの判断をする「容疑問題検討会」とは別で、リコールについては話し合われていない。結局、04年の事故後に初めてリコールした。県警は、会議に出席した副社長らがリレーロッドの技術的問題について把握していた可能性はあるとしているが、リコールの判断権限は書類送検した品質保証部長にあるため、副社長らの立件は見送る方針。(2006年7月12日 西日本新聞

記事を読む限り、三菱自動車がやっていたような大規模なリコール隠しでは無さそうですが、部品の不具合が見つかった時点で最も危険性が高いランク(Aランク)の不具合であることをリコール発動の判断責任者である品質保証部長だけでなく、品質保証部門担当の副社長と常務まで認識していたにもかかわらず、何らの対応を取らなかったというのはトヨタらしくないというか何と言うか。

Aランクの不具合が全てリコール対象となるわけではないようですが、そうだとすると「車両の重要故障で緊急措置が必要」というかなり強烈な表現で定義される不具合にもかかわらずリコール対象とならない不具合ってどんな不具合なんだ?とか、現場がAランクに該当すると報告した不具合をリコール対象外とする判断は本当に当てになるのか?等々いろいろな疑問が湧きます。

結局、今回のケースについては、Aランクの不具合という現場の評価に蓋をした決定は明らかな経営判断ミスだったわけです。トヨタのリリース「熊本県警発表に関するコメント」によれば、立件の対象となった事故が発生する前からリコールの検討を始めたようですが、実際にリコールを決定したのは事故の発生に背中を押されてからとのことでしたから、展開によっては株主代表訴訟やユーザーのクラスアクションにつながる可能性もあったと言えそう。トヨタでもこういう事があるんですねぇ。