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お気楽金融雇われ人の見聞録

「関係がない」という主張自体が権利の濫用にあたる可能性がある

長年生活なら「親子」 最高裁が初判断
広島市内の65歳の男性と都内の63歳の男性に対するこんな2件の訴えについて、最高裁第二小法廷は7日、いずれも親族側の主張が権利の乱用にあたる可能性があるとして、いずれも「子」側の敗訴とした二審を破棄し、審理を高裁に差し戻す判決を言い渡した。「親子関係」の生活実態に照らして、「関係がない」という主張をすること自体が権利の乱用にあたる場合がある、とする判断を最高裁が示すのは初めて。
…第二小法廷は、こうしたケースにおける判断要素として、(1)生活実態があった期間の長さ(2)親子関係が否定されて本人らが受ける精神的苦痛・経済的不利益(3)関係不存在を申し立てた側の経緯や動機、を指摘。これらを検討して、親子関係を否定することが著しく不当な結果をもたらす場合、関係不存在の訴えは権利の乱用にあたる、との一般判断を示した。
広島市の男性の場合は、他家に養子に行った「姉」が02年に提訴した。第二小法廷は、このケースでは戸籍上の父母がすでに死亡していることを重視。改めて養子縁組をすることが不可能なことや、親子関係を否定されると遺産相続で経済的不利益を被ると指摘し、広島高裁に差し戻した。
都内の男性については、「父」はすでに死亡し、その後不仲になった「母」が04年になって提訴した。第二小法廷は、虚偽の出生届を出した本人が「不存在」を主張するのは「当事者間の公平に著しく反する」と述べ、東京高裁に差し戻した。(2006年07月07日 asahi.com

細かい内容は分かりませんが、どちらも相続がらみのいざこざなんでしょう。

訴えられていた男性は、本来養子縁組されるべきところを実子として届けられていた、という点で手続き上のキズはあります。でもその手続のキズだって本人がやったわけじゃないし、60年以上親子や家族として生活してきたのに、不仲になったところで大昔の手続き上のキズを蒸し返されて家族の縁を切られてしまうというのは、気の毒すぎるでしょう。「相続は争族に通ず」とは良くぞ言ったものです。

東京の案件などは、虚偽の届出をした本人が手続のキズを理由に関係不存在の訴えを起こしたようですが、これなんかは、記事にあるように「不仲になった」ことだけが理由だったとしたら、訴えを提起すること自体図々しいような気がします。

訴える側の気持ちも分からなくはないですが、それって法律的にどちらが正しいか以前に人間としてどうよ?という気はします。ゲームの展開が気に入らない子供のリセットボタン攻撃じゃないんだから。

そういう点で、今回最高裁が「関係不存在を申し立てた側の経緯や動機」に注目して権利の濫用を認定する可能性を認めたことは、極めて全うな判断だと思います。