聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

中田選手引退とキャリアのたな卸し

中田選手が、日本代表どころか、サッカー選手を引退するそうです。ブラジル戦のあと、長い間ピッチに横たわっていたのは、この伏線だったのですね。日本代表チームの中では、その存在感の一方でチームから浮いているんじゃないかという報道もあり、実力者の常とはいえ常に毀誉褒貶にさらされる選手でした。また、過去3回の日本のワールドカップ10試合全てに出場したのは中田選手だけということで、今回の彼の引退は日本のサッカー界にとってひとつの区切りになるのは間違いないでしょう。

日本サッカー界とか、サッカー選手の生き方を離れて、一人の人間のキャリア形成という点で見てみても、彼がプロサッカー選手のキャリアに10年間でピリオドを打って、違うキャリアを目指すというのはなかなか興味深いものがあります。

雇われ人の世界では「キャリアのたな卸し」という言葉を、特に転職支援サイト近辺で目にするわけです。私自身、一時期転職を考えた時期もありましたが、そのとき感じたことは、実際にキャリアのたな卸しをやって、それなりのものを卸してこようと思うと、やはり何らかの成果を残しておきたいというのが人情であること、そのためにはある程度の期間、集中して仕事に取り組んでいる必要があり、それには10年近い年月がかかるんじゃないかなということ、でした。現在は二足のわらじを履いているわけですが、これはキャリア転換よりキャリア拡張の方がよろしかろうという判断によるもので、キャリアのたな卸しの真似事の成果といえば言えるかもしれません。

で、私としては今回の中田選手の引退もこれと同じ、すなわちキャリアのたな卸しの結果なんじゃないか?と思うわけです。一般人と一緒にするなというツッコミが飛んできそうですが、一流サッカー選手だからといって200歳まで生きられるわけじゃなし、キャリア形成という観点では、一般人と同視できる部分も大いにあると思います(Jリーグを引退して司法試験に合格した人もいましたし)。人生80年で60歳までバリバリ働くとして、10年ごとに仕事との係りあい方を考える機会を持てば、少なくとも3回(30歳前後、40歳前後、50歳前後)は方向転換するチャンスがあるわけで、彼は1回目の分かれ道でサッカーでない道を選ぶことにしたのかなと。

反面、業界トップクラスの選手が自分たちの業界を「見捨てて」、他業界へ行ってしまうことについて、面白く思わない人もいるかもしれませんが、中田選手がどの方向に進むにせよ、サッカー選手のキャリア形成にとって新しいロールモデルとなる可能性がありますね。私は応援したいと思います。