聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

むしろなぜ解約したかが問題

民主、首相の任命責任追及・日銀総裁村上ファンド投資
野党は日銀の福井俊彦総裁が村上ファンドに投資していた問題を重大視し、総裁の進退を問う構えだ。小泉純一郎氏の任命責任も徹底追及する方針で、18日に国会が終わってからも閉会中審査などを求める。
民主党小沢一郎代表は13日の記者会見で「金融の元締である日銀総裁が司直の手にかかるようなファンドに投資していたことは大きな問題」と批判。「トップリーダーとしての首相の責任も政治論として大きい」と強調した。(NIKKEI NET 2006年6月14日)

日銀の福井総裁が村上ファンドに出資していたという話、脇が甘いなぁとは思うし、確かに日銀総裁に就任する時に資金を引き上げておけば何の問題も無かったでしょう。でも、野党が「出資していたこと」を問題視するのはズレていると思います。特定のファンドに出資していたことをもって金融政策の中立性が疑われるなら、特定企業の株式に出資している国会議員も当該業界に対する中立性が疑われますから、関係する委員会に属しているのは問題だということになります(そういう議員がいるかどうか知りませんが)。

問題は「村上ファンドに出資していたこと」そのことではなく、むしろ、「ライブドア強制捜査が入った後の2月にライブドアと関係が深い村上ファンドの資金を引き上げようとした」という点でしょう。時期的に見て、何かネガティブ情報を手に入れたから資金を引き上げようとしたんじゃないの?と疑われても文句は言えないでしょう。資金回収できないことも視野に入れて持ち続けていればいいのに、最悪のタイミングで解約に動くとは、とことん脇が甘いと思います。

そりゃ村上ファンドは私募ファンドですから、いつ出資を引き上げてもインサイダー規制に引っかかったりはしないのでしょうけれども、日銀総裁就任時に資金を引き上げなかった理由が「仲間内で自分だけ資金を引き上げるのはどうかと思った」という仲間思いのものだったのに、仮に解約しようとした理由が「日銀総裁が特定ファンドに出資しているのは中立性に問題があると思った」などという理由だったりしたら、それを額面どおり受け止める人はいないでしょう。野党が正面からそこを突いてきたら、福井総裁はどう説明するつもりなのでしょう。

私は福井総裁の投資自体はあまり問題だと思わない(ホールドし続けることが条件ですが)のですが、福井総裁の投資に対する認識の甘さや脇の甘さは、金融政策の元締めたる資質に欠けている以外の何者でもないと思います。身を引かれるのが無難だと思います。

[追記(2006.6.16)]

日銀福井総裁の国会での質疑、正直呆れました。あれは追求する方が悪い。私が感じたことはぐっちーさんの「福井総裁 ふたたび…」で言い尽くされていますので、紹介させていただいて、とりあえずこの件は終わり。