聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

村上さん逮捕

村上ファンドの村上さんが逮捕されて色々な反応が出てきているわけですが、金融・証券・法律に造詣の深いであろう方々で村上さんを擁護する意見がちらほら見えます。指摘されていることは、村上ファンドには旧態依然とした上場企業の意識改革を迫った側面もあるとか、証券取引法166条の文言は何がインサイダー取引に当たるか不明確だという指摘であるとか、検察は公判を維持するのが難しいかもしれないという見通しであったりするので、「擁護」というのは言い過ぎかもしれませんが、ちょっと見識を疑っちゃいますね。

確かに指摘されていることはいちいちごもっともなのですが、それが村上さんを擁護することには繋がるのはおかしいと思うんですよね。インサイダー取引というのは本来得るべきではない利益を捏造して独り占めしたり山分けしたりするもので、言ってみれば、公共事業の談合なんかと同じ構造でもって、構成な競争環境を破壊してしまう、正直者がバカを見るという構造をもつものです。ことあるごとに日本の資本市場が古いことを力説していた村上さん自身が、そんな「遅れた」手法でもって、一般の投資家を出し抜いてサヤを抜こうとしていたこと自体お笑いですが、この期に及んで村上さんを擁護する「専門家」というのもなんだろうなぁと思ってしまいます。

私なんぞがこんなこというのはおこがましいのですが、いやしくも「プロ中のプロ」を自認する投資家であればインサイダー取引の未然防止、すなわち非公開情報の取扱いに細心の注意を払うべきことは基本中の基本でしょうに。「ちょっと聞いちゃった」で免責されるのであれば、銀行や証券会社もチャイニーズウォールを気にせず株式ディールができますし、融資担当者も個人で大もうけできますね。インサイダー取引規制というものは、そういう恵まれた情報へのアクセスを持つ者に対する規制な訳で、市場にある程度以上の影響力を持つ村上ファンドは、すでに恵まれたアクセスを持つ者になっていたわけです。そう考えれば、村上さんが自らのファンドが非公開情報を「ちょっと聞いちゃった」では済まされない、「聞いたら負け」なファンドになっていたという自覚を持っていなかったとしたらあまりにイタイことだと思います。

そういう観点で私は「我々金融に携わりお金を扱う人間はタダでさえ後ろ指をさされやすいのだ。そういう自覚をもって、自らを律して生きる・・・・と言う考え方にはならないのだろうか。」というぐっちーさんのご指摘(村上世彰、最後くらい男らしくせい!!)に深く深く同意します。