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お気楽金融雇われ人の見聞録

ちゃんと実務がまわるんだろうか?

首都・阪神高速、ETC義務化を本格検討・2008年度メド
国土交通省首都高速道路阪神高速道路の通行車両に2008年度から自動料金収受システム(ETC)の利用を義務づける方向で本格的な検討に入った。昨年10月の民営化を受け経営効率化へ料金徴収コストを大幅に減らすのが狙い。未搭載車は利用できなくなるため、道路運営2社と近く協議会を設け、対策づくりを始める。利用料の引き下げや簡易型ETCの導入が焦点となる。
両高速道路での料金支払いは、いまは現金とETCのどちらでも可能だ。ETCを義務づけると、すべての入り口がETC専用となり、未搭載車は通行できなくなる。(NIKKEI NET 2006年5月15日)

日経以外取り上げていない、プレスリリースも出ていないところを見ると、国土交通省アドバルーン記事なんでしょうが、現金窓口を全廃して本当に実務が回るのかな?サンデードライバーから見るとえらく疑問ではあります。

国土交通省が発表した「ETCの普及・利用状況(速報)」(PDF)によれば、この4月末でのETC利用率は約60%、首都高速に限れば68.6%と、確かに最近1-2年でETCの普及率が急に高まっていることは分かりますが、首都高でもまだ3割以上の利用者が現金収受を利用しているんですよね。

調査の元となっている数字を見ると、首都高では1日あたり117万台弱の利用者(車)があって、そのうちETCを利用しているのが80万台強。実に37万台近い車が現金収受で首都高を利用しているわけですよね。利用率7割と言っても実台数で言えば37万台の現金利用があるわけで、現在の利用車数を前提とすれば利用率が9割を超えても現金利用は10万台以上あるわけですから、簡易型ETCを入れるといってもかなり難しいように思います。

仮定の話を続きますが、国交省と首都高の目論見どおり、2008年度にETCを義務付けて、上の現金利用車10万台を締め出したと考えると、料金収入は10万台分減ると考えるのが自然でしょう。すると、1台あたり利用料700円×10万台×365日=約255億円の収入が減少することになります。首都高全体の人件費がどのくらいか分かりませんけど、18年度収支予算の管理業務費(178億円)と一般管理費(118億円)の合計が300億円弱ですからの内枠であることは間違いないでしょう。すると、ETC義務化のアイデアというのは、300億円の内枠に留まる程度の費用を削るために255億円の収入をどぶに捨てるアイデアということになりますが、そこまでして実施する価値があるアイデアなんですかね?

毎日首都高を利用して、ひどい渋滞に悩まされている方から見れば、利用車が1割減ることで快適に走れる環境を手に入れられる可能性がある点でハッピーなのかもしれませんが…。