聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

中央青山に業務停止命令へ

以前「カネボウの粉飾は監査法人のご指導でしたか」でも書きましたが、企業の財務諸表を監査する立場の監査法人が進んで決算の粉飾に手を貸していたということは、監査法人自身の存在意義を失わせてしまうものですから、行政処分もやむなしかなと思います。

金融庁中央青山の一部業務停止命令へ・カネボウ粉飾で
金融庁は8日、中央青山監査法人に対し、カネボウ粉飾決算などで所属会計士の不正を未然に防ぐ内部管理体制に重大な不備があったとして、週内にも監査業務の一部停止命令を出す方針を固めた。期間は1―2カ月となる見込みで、すでに監査を担当している一部企業への監査業務も停止の対象となる。多くの大企業の監査を担っている4大監査法人に業務停止を命じるのは初めて。金融庁は監査先企業への影響を最小限に抑えるために、処分の発動時期については配慮する見通しだ。(NIKKEI NET 2006年5月9日)

このタイミングで処分の話が出てきたというのは、先日の金融審議会での厳罰化議論が少なからず影響しているのかな?一方で「厳罰化だけじゃ解決しないでしょうね」に書いたとおり、監査の現場はある意味悲惨な状況に置かれているわけですから(中央青山も例外ではないでしょう)、そうした監査実務を支える現場の負担とかコスト負担についての議論がされず、刑事罰の導入などの厳罰化の議論ばかりが先行しているというのは如何なものか、と思っていました。

思っていたのですが、金融庁が公開した金融審議会の議事要旨(第5回)を見ると、刑事罰の導入が俎上に上っていることは間違いなさそうですが、厳罰化ありきで議論が進んでいるというよりは、むしろ監査現場の負担の話や上場企業については関与先企業から監査報酬が直接監査法人に流れない仕組みの必要性などにも言及があるようで、必ずしもバランス感を欠いた議論がなされているわけではなさそうです。そうすると、先日の日経の記事は若干ミスリーディングだったということになりますね。

中央青山に話を戻せば、カネボウの粉飾に関連して所属の会計士が起訴されたのが昨年の9月で、今回の行政処分までに半年以上の時間がかかっていることを考えると、最終的な処分の落としどころに悩んでいた金融庁は、審議会の議論に背中を押される形で、業務停止命令という重たい処分に踏み切らざるを得なくなったのでしょう。今の時期は3月決算の会社の監査が佳境を迎えている時期ですから、処分するならするでもう少し早く決められなかったものかと思いますが。