聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

メディアの自主規制配慮条項は勇み足でしょう

国民投票法案、メディアの自主規制残す…与党・民主
自民、公明、民主3党は、憲法改正手続きを定める国民投票法案をめぐる実務者協議で、同法案の論点のメディア規制について、「報道機関は、国民投票に関する必要な情報の提供について自らが果たす役割の重要性にかんがみ、表現の自由を乱用して国民投票に不当な影響を与えることのないよう配慮する」との表現で、自主規制の規定を残すことで大筋合意した。
国民投票運動に対するメディア規制について、与党案では「報道機関は虚偽の事項を報道し、事実をわい曲して記載するなど、表現の自由を乱用して投票の公正を害しないよう、自主的な取り組みに努める」としていた。自主的取り組みとして、具体的に<1>報道に関する基準の策定<2>学識経験者を構成員とする機関の設置――を例示し、報道機関が自主的に国民投票運動に対する報道基準を作ることを求めていた。
これに対し、民主党は「一切の規制を設けるべきではない」と主張し意見が対立していた。今回、実務者協議で大筋合意した案は、報道基準の策定などを削除し、報道機関が「国民投票に不当な影響を与えることのないよう配慮する」との表現で、与党案にあった自主規制の拘束力を弱めた格好だ。(YOMIURI ON-LINE 2006年5月2日)

そういえばテレビ朝日への出演拒否をしてみたり、自民党はことあるごとにマスメディアの「不適切な報道」に反発していたのでした。「報道機関は虚偽の事項を報道し、事実をわい曲して記載するなど、表現の自由を乱用」というある種不適切な表現にマスメディアに対する自民党の見方が良く出ていて面白いですね。ただ、最近の自民党の広報戦略の方向とは違うような気がするのは、憲法調査特別委員会あたりは自民党クラシックが握っているということなんでしょうか。

一方「一切の規制を設けるべきでない」としていた民主党が、多少表現を和らげたとはいえ、結局配慮条項の導入に賛成したのは、もともと憲法改正自体にそれなりにコミットしているからと考えるべきなのか、マスメディアは放っておいても自分たちの味方だと思っていたのが、実は違っていたというのが永田メール事件あたりでようやく気がついたということとなのか……。

あまりマスメディアの肩を持つ気は無いのですが、私はメディアに対する規制は無い方が良いと思っています。確かに虚偽の事項を報道したり、事実を歪曲して記載するなどというのは論外で、またこの論外に該当するような報道があったりするのがちょっと…なところはありますが、それでも立法サイドがメディアに対して「配慮しろ」などというのはやり過ぎでしょう。

そもそも立法サイドがメディアに厳密な意味での公正中立を期待するのは間違っているわけで、異なるスタンスに立つメディアが存在して、かつ、各メディアが拠って立つスタンスをある程度明確にした上で報道してくれればそれで十分です。人為的に同じ方向に揃えられた情報しか出てこないのであれば、そちらの方がよほど不健全です。

自民党の気持ちも分からないでは無いですが、これはかなり勇み足な決定だと思います。これが自民党クラシックへの先祖がえりの端緒とならなければ良いのですが…。