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お気楽金融雇われ人の見聞録

厳罰化だけじゃ解決しないでしょうね

金融審、監査法人の改革議論に着手・刑事罰が焦点に
金融審議会(首相の諮問機関)は26日、約40年ぶりとなる監査法人制度の抜本改革に向けた議論に着手した。監査法人刑事罰を適用すべきかなどが焦点。カネボウライブドアなど上場企業を舞台にした粉飾決算を踏まえ、監査法人の役割と責任を大幅に拡大し、不正会計を未然に防ぐことをめざす制度改革を年内にもまとめる。
金融審は同日、公認会計士制度部会(部会長は新日本製鉄の関哲夫常任監査役)を約3年ぶりに開き、政府が来年の通常国会にも提出する公認会計士法改正案のたたき台をつくる作業に入った。会合では「上場企業の監査がきちんと行われていない」などの批判が続出した。
議論の焦点は監査法人に対する刑事罰の適用。所属会計士が粉飾決算に関与しても、現行の会計士法では監査法人に責任が及ばない。監督責任に対する監査法人の緊張感の欠落が不祥事の一因との指摘は多く、会合でも刑事罰の導入を求める意見が相次いだ。(NIKKEI NET 2006年4月27日)

う~ん、確かにこのところ会計士が関与する不祥事が続いていますが、厳罰化すれば解決するというほど短絡的な問題でも無いような気はしますね。個人的には監査法人・会計士に同情的です。

「上場企業の監査がきちんと行われていない」ということですが、監査法人にしてみれば「ヒトも時間もまるで足りない」というのが正直なところでしょう。特に最近の企業、特に銀行の統合などによる巨大化や新会社法に基づく四半期決算、証券取引法金融商品取引法)に基づく日本版SOX対応など立て続けに導入される各種の規制への対応なども含めてきちんと監査しようと思ったら、ひとつの会社に何十人、場合によっては100人超の担当者を「ほぼ常時」張り付ける必要があるはずですから、本当に「ヒトも時間もまるで足りない」状態だと思います。実際、私の勤務先で見かける監査法人の担当者も深夜労働・土日勤務当たり前というそれはそれは大変な労働環境のもとで働いており、見ているこちらが気の毒になることが良くあります。

じゃあ担当者を増やせばいいじゃんという考えもありますが、そこは関与先の企業が許してくれないのでしょう。監査を受ける企業にしてみれば、会計監査の対価として監査法人に支払うフィーはなるべく抑えたいというのが人情ですから、監査法人に対しては担当者の数を必要最小限にしてもらいたいという要求が恒常的に出ているはずで、結局監査報酬を失うことを避けたい監査法人側が押し負けてしまうケースというのが、表には出てきませんが結構な数に上るんじゃないかなと思います。

そこには、監査対象の企業から監査報酬を得ないと収入が途絶えてしまうという制度的な矛盾が顔を出しているわけです。また裏を返せば監査を受ける側の企業も会計監査の必要性をあまりに低く見ているということも言えると思います。そうした状況を放置して「厳しく監査しろ」とかラッパを吹いたり、厳罰化を図ってもどこまで実効性が上がるか甚だ疑問ですね。