聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

弔慰金より給料

そういえば10年ほど前に会社から団体生命保険の取り扱いが変わる通知があったことを思い出しました。私は「へー、わざわざ従業員の生命保険を会社負担で掛けてるなんて物好きな会社だ」と思ったくらいでしたが、同じような事例で裁判が起きていたとは。

団体生保めぐり最高裁が初判決、遺族側の敗訴が確定
企業が従業員にかけた団体生命保険の保険金を遺族が受け取れるかどうかが争われた二つの訴訟の上告審判決が11日、あった。最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は「会社側は、社内規定に基づく額を超えて、受け取った保険金を遺族に支払うと合意していたとは認められない」と訴えを退け、遺族側の敗訴が確定した。…
…判決は、団体生保の趣旨は「従業員の福利厚生を図る目的」だと明示した。住友軽金属は(1)従業員の死亡時に6千万円を超える高額の保険を掛けながら、遺族に支払われたのは1000万円前後(2)生保各社との関係を良好に保つために保険を結び、受け取った保険金などを保険料の支払いに充当することを漫然と繰り返した――と指摘。「こうした運用は保険の趣旨から逸脱する」と非難した。
しかし、(1)だけで社会的妥当性を欠いて許されないとは言えないと判断。原告のうち3人に保険金の一部を支払うよう同社に命じた二審の判断は誤りだと結論づけた。(asahi.com 2006年4月11日)

記事を読んだ限りの感想ですが、旧Aグループ保険は基本的に会社が保険料を支払っていますから、自分で保険料を支出していない従業員側が保険を掛けられていることを知らされていなかったこと、会社が受け取った保険金の一部しか遺族に渡されていなかったことを理由に保険金の引渡しを求めることはちょっと難しいんじゃないかと思います。自分のサイフは傷んでいないわけですし。

記事には出ていないので良く分からないのですが、会社が不当に保険金を受け取っている(裏返すと従業員側が保険金を受け取ることができる)と判断した理由はなんだったんでしょうね?例えば、本来従業員に支払われるべき給与の一部を会社が流用して保険料に当てていたというような主張だったんでしょうか。言わんとするところは分からないでもありませんが、実際問題としては予め給与規定が定められており、これに沿って給与が支払われている限りは会社による給与の流用を証明することはできないでしょうから無理筋な主張ですよね。

ただ、6000万円を超える死亡保険金を受け取るには、団体割引が適用されるとしても会社全体で見れば月々の保険料負担は結構な額にのぼるはずで、受け取った保険金を保険金の支払に充てるくらいなら、その分遺族に渡してくれてもいいじゃないかというのは心情的にはわかります。もうひとつ付け加えれば、従業員の遺族に対する弔慰金の支払いなんかで会社が傾くなんてことは、まずあり得ないわけですから、そんなことするカネがあるなら普段の給料上げてくれよというのが従業員の心の叫びですよね。会社としても、そちらの方がよほど社員満足に貢献すると思うのですが。