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お気楽金融雇われ人の見聞録

郵貯銀行の一石三鳥のアイデア

郵貯銀行やるなぁ」というのが正直なところ。実現すればシステム開発の時間もヒトもカネも節約できる一石三鳥のプロジェクトになりますね。

郵貯銀、大手銀から基幹システム買い取りへ
郵政民営化の準備会社、日本郵政は2007年10月の民営化で発足する郵便貯金銀行の基幹システムを、大手銀行から買い取る方向で検討に入った。みずほ銀行・日本IBMと、三菱東京UFJ銀行・日立製作所に打診した。システム経費を数百億円規模で圧縮して経営効率を高める。独自開発ならシステムエンジニア(SE)不足で民営化に間に合わないと判断。利用者が他の金融機関の口座に資金を振り込めるようシステム整備を急ぐ。(NIKKEI NET 2006年3月23日)

民営化後の郵便貯金銀行の顧客にとっても既存民間銀行との間で資金のやり取りができるようになれば利便性が増すし、ということでいいこと尽くめのアイデアだと思います。

とはいえ、郵便局や銀行の窓口業務をはじめとした日常業務の手順は基幹システムによって決まってしまうので、郵便局の既存のシステムを置き換えるとなると、郵便貯金銀行の中の人たちは窓口業務の事務手順をイチから覚えることを強いられるので大変でしょう。

そういえば銀行が合併する時に「どちらのシステムが基幹システムとして残るか?」というテーマが経営陣を巻き込んだ大騒ぎになるのは、銀行の合併が相次いだここ10年くらいですっかりおなじみの光景になってしまいましたが、あれも単なる主導権争いというよりは慣れ親しんだ仕事の手順を残せるかどうかという問題だったりするわけです。外からはかなりナンセンスな争いに見えますが、中の人にとってはこれまでの業務手順を捨ててイチから事務手順を覚えなおさなければいけないのでそれなりに切実な問題ではあるのです。

もうひとつ面白いのは、「旧富士銀行が使っていた日本IBM製と、旧UFJ銀行が使っている日立製作所製を候補とする」というところ。

今回三菱東京UFJ銀行のシステム統合が完了すると、いわゆる都銀由来の基幹システムからは日立製のシステムがなくなってしまうことが見込まれています(みずほコーポレート銀行のシステムは、旧日本興業銀行由来のシステムなので「規模」の点では都銀のシステムよりは小さくなっているはずです)。IT産業の雄である日立製作所としては、大規模システムの運用実績の一つとして是が非でも取りたいところでしょう。

もちろん日本郵政の西川社長がそのあたりの事情を知らないはずがありませんから、日立は採算面でかなり苦しむかもしれませんが、この案件は日立が本命で日本IBMは当て馬という構図だと思います。