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お気楽金融雇われ人の見聞録

意欲的女性は会社志向?

意欲的女性は会社志向
近年、若年層の社員の間では全般的に会社離れの意識が強まっているが、就職後に向上心を持って仕事に取り組む意欲を強めた女性は男性よりも会社志向が強い。企業はこうした女性社員の意欲を減退させないよう、女性の継続就業のための施策を充実させる必要がある。(日経「経済教室」 2006年2月23日)

明治大学就職・採用行動研究会が入社後2~5年の若手社員を対象に実施した「大卒若年層の就職後の意識調査」を踏まえた、牛尾奈緒美明治大学助教授の寄稿ですが、煽り気味のタイトルに惹かれて読んでみました。

調査結果からは「就職後意欲の高まった若手社員(すごいカテゴライズですね)のうち、男性は自分自身の向上と会社との関連(例えば昇進)が必ずしも一致しないのに対し、女性は会社との関わりの中で自分自身の向上を目指している」という傾向が伺われるとのこと。ロイヤリティの対象が「仕事」なのか「会社」なのかというところに、今の男女間の意識の違いが現れているということでしょうか。

バブル崩壊直後に就職し「失われた10年」の中でリストラされていく上司・同僚を当たり前のように見てきた人間からすると、「会社を通じて自己実現を図りたい」という希望を純粋でまぶしいなぁと思う反面、「会社に期待しすぎるとロクなことが無いよ」と、その純粋さに危うさを感じてしまいます。ちょうど、社外の人と話をしていて「会社(特に大きな会社)の中では、社内ポリティクスから距離を置いた方が楽しく仕事ができるねぇ」というところで認識が共通したばかりだったので尚更そう思うのかもしれませんが。

良きにつけ悪しきにつけ、組織は組織のために働こうという人間を重宝する一方、使い倒そうとする性質を持っているので、青雲の志に水をさす気はありませんが、「会社を通じて自己実現を図りたい」という欲求は、組織から見ると実に都合のいいものだということは認識しておいても損は無いでしょう。

牛尾助教授は企業が取るべき戦略として「女性をターゲットとしたポジティブアクションを導入し、組織における募集・採用、配置、昇進、育成の各実態を精査し、女性の継続就業や管理職への登用を促進するためのしかるべき施策の策定・実施すべき」と主張しています。男女の性差を理由とした差別は解消すべきと思いますが、男性が「脱会社人間」を目指している一方で、女性が女性の「会社人間」化を後押しする論文を発表するという構図は結構な皮肉に見えます。