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お気楽金融雇われ人の見聞録

フェードアウトを目論む信用保証制度

信用保証料率、リスクに応じて9段階に
経済産業省は国が認可する各地の信用保証協会が手掛ける信用保証制度について、企業が支払う保証料の料率を、4月から企業の経営体力に応じて9段階に分ける。現行は一律年1.35%だが、0.5―2.2%に切り替える。中小企業を一律支援してきたこれまでの枠組みを改め、債務が返済できなくなるリスクを反映することで、各企業に業績向上への自助努力を促す。信用保証制度の赤字縮小にも役立てたい考えだ。(NIKKEI NET 2006年2月20日

もともと信用保証協会で手がける信用保証制度は、民間の金融機関のプライシングでは借り入れができない(借りても返せない)かもしれない「中小企業に対する金融の円滑化」を目的とした、いわばセーフティネット的な性格を持つ制度ですから、リスクに見合ったリターンを取ってそれで良しというものでは無いはずです。信用リスクに対するリターンという観点からは逆進性があるとしても、一律の保証料率とすることが筋じゃないかと思うのですけれども。

それは保証行為も広い意味での与信行為にあたりますから、保証を受ける企業の信用リスクを反映した保証料率を設定することは一見もっともらしい見直しに見えます。しかし、メガバンクはじめ金融機関が中小企業向けの無担保融資ビジネスになだれ込んで競争している状況、これらの無担保融資と保証協会の保証を受けられる条件があまり変わらない状況を踏まえると、民間銀行の無担保融資を利用できる企業がわざわざ保証料を負担して保証協会を利用するとも思えません。保証料率が各企業の信用リスクを反映するというのであれば尚更です。今回の見直しは、企業から見てあまりメリットが無いように思います。

信用保証協会のバックにある中小企業金融公庫も統合方針が打ち出されていることとあわせて考えると、今回の保証料率の見直しは「信用保証制度の赤字縮小」ではなく、「信用保証制度のフェードアウト」が狙いじゃないかと勘ぐりたくなるわけです。