聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

コトは厚労省の守備範囲を超えていると思うのですが

有給休暇、計画取得義務づけ・厚労省検討
厚生労働省年次有給休暇の取得を促すため、一定日数については取得時期をあらかじめ決めておくことを企業に義務づける検討に入った。年度当初などに取得時期を決め、計画的な消化につなげる狙い。残業が一定水準を超えた場合、超過時間に見合うだけの休日を与える制度を設けることも検討する。労働時間規制の実効性を上げ、就労環境を改善する考えだ。
厚労省は労働時間制度を抜本的に見直す方針。一定以上の年収を得ていることなどを条件に、残業や休日労働に割増賃金を支払う規制から除外する対象を拡大する方向で検討している。これ以外の一般の労働者については、休暇取得を後押しするとともに長時間労働に歯止めをかける。(NIKKEI NET 2006年1月16日)

昨年11月に出た有給休暇を時間単位で取得できるようにする制度改正案の時も思いましたが(時間単位の有給休暇って意味無いんじゃ…)、厚生労働省のこの手の施策はどうしても「アリバイ作り」のように見えてしまいます。そもそも「年度」ベースで休暇の取得計画が立てられる環境であれば、年間通してみればそれなりの休暇を取得できるでしょうし、残業時間の把握ですら不正確な状況で一定水準を超えた残業を休暇に振り替える制度を導入しても絵に描いた餅になるのは目に見えているのですが……。

毎日新聞の連載企画「縦並び社会・格差の現場から」の「眠りながら走れ」などを読むと、コトは既に厚生労働省の施策や指導だけで対応できる範疇を超えてしまっていると痛感します。運送業界に限らず、実際問題として「残業手当?有給休暇?何だそれ?」という世界が現実にあるという話はよく聞くわけで、残業手当にしろ、有給休暇にしろ、本当にきちんと取得させる必要があるのであれば、従業員の労務管理(残業管理、休日管理)ができない企業に対するペナルティとセットで考えるべきでしょう。

その結果(副作用)として、公的部門の拡大(労働基準監督署等の人員増加)や経済コストの増大(残業手当などの人件費の増大など)が考えられます。その副作用を社会的に許容できるかどうか、イメージだけでなくきちんとした数字を使って検討する時期に来ているのだと思います。私自身は公的部門はまだスリム化の余地があると思ってはいますが、それは例えば官民で守備範囲が明らかに重複するなどの非効率が温存されている部分についての話で、この類の仕事は公的部門が担うべきなのだろうと思います(効率的な運営が大前提ではありますが)。

本来なら連合を支持母体に持つ民主党がもっとしっかり取り組むべき課題のはずで、「改革競争」などと銘打って自民党の政策の劣化コピーを粗製乱造するくらいであれば、「地に足をつけて」労働問題を議論してもらいたいものです。自分たちで選んだ代表の足を引っ張る話ばかり聞こえてくる現状を見ると期待薄ですが……orz