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お気楽金融雇われ人の見聞録

またぞろ北朝鮮がきな臭くなってきた

基本的には中国に経済支援の要請に行ったと考えるのが妥当でしょう。北朝鮮も中国も北朝鮮国内の金繰りさえつけば、本音では6カ国協議などどうでも良いと思っているはずですから、6カ国協議の早期再開の手立てを講じることが焦点などという朝日新聞はじめ日本のメディアの見方はわざととぼけているとしか見えません。

北朝鮮・金総書記の訪中確認 胡主席と会談へ
北朝鮮金正日キム・ジョンイル)総書記が10日、中国を訪問したことがわかった。中朝関係筋が明らかにした。中朝間では中国の胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席共産党総書記)が昨年10月に訪朝したばかり。2カ月余りの間に中朝の首脳外交が繰り返されるのは異例だ。米国による事実上の金融制裁問題で暗礁に乗り上げている6者協議をめぐり、中国が議長国として早期再開につながる有効な手だてを講じることができるかどうかが最大の焦点となる。
金総書記の訪中は04年4月以来。詳しい日程は不明だが、滞在中に胡主席との首脳会談に臨むとみられる。会談では、休会中の6者協議の再開問題を話し合うとみられるほか、米国による金融制裁をめぐり、中国からも働きかけを強めるよう北朝鮮が求める可能性もある。 (asahi.com 2006年1月11日)

北朝鮮アメリカの金融制裁の解除を執拗に求めるのは、マカオでのマネーロンダリングを経て北朝鮮流入していたドルの流れが止まったことで、北朝鮮の輸入余力(=外貨準備)が細っていることを意味していると思います。北朝鮮マネーロンダリングについては、中国も間違いなく何らかの証拠を押さえているはずなので、情状酌量(というかお目こぼし)をお願いに金総書記自らが参上したという見方もできるでしょう。この辺は韓国の朝鮮日報の方がしっかりと踏み込んだ記事を書いています。

金正日総書記訪中】「北で重大問題発生か?」
政府の高位関係者は「北朝鮮は米国の金融制裁で大変な状況に追い込まれたが、ここにきて中国まで制裁に加わる場合、北朝鮮は極めて苦しい状況に陥る可能性がある」とし、「その他の問題より、金融制裁問題を中心に話し合う可能性が高い」と述べた。
中国はマカオ所在のバンコ・デルタ・アジア(BDA)銀行の対北不正取引疑惑について調査を終えているほか、近くこの問題をめぐり立場を明確にしなければならない。このような中、金総書記には中国と話し合いたい何かがあったとの見方だ。
南成旭(ナム・ソンウク)高麗(コリョ)大学教授は「北朝鮮の立場からすれば、偽ドル札製造について証拠を握っている中国が米国の要求を拒否するかどうかは、生死にかかわる問題」と話した。(朝鮮日報[日本語版] 2006年1月11日)

中国とすれば、北朝鮮の犯罪行為を黙認していたということで共犯扱いされてしまうわけにもいかないので、北朝鮮の要求をすんなりと呑むわけにはいかないはず、と思いますが、イランが核研究活動を再開することにしたのは、いやな感じです。

イラン核問題:安保理常任理事国が個別にメッセージ
10日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、米英仏露中の国連安保理常任理事国5カ国が先週末、核研究活動の再開を通告したイランに対し、ウラン濃縮に踏み切らないよう個別にメッセージを送っていた、と報じた。
同紙によると、米英仏は5カ国が一致して共同声明を出すことを試みたが、中国が団結した行動を嫌い、各国個別のメッセージになったという。(毎日新聞 2006年1月11日)

イランの動きは中国が裏で糸を引いているようにも見えますし、そうだとすれば今回の金総書記の訪中は、北朝鮮の核開発再開に向けての打ち合わせという見方も出来るように思います。そう考えると、アメリカのハル国務次官補の日中韓訪問は、中国の牽制が主目的ということなんでしょう。