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お気楽金融雇われ人の見聞録

日ロ首脳会談は成果ナシ?

昨日は、明け方から突然吐き気と下痢、発熱に見舞われてダウンしてしまいました。体が冷えたのかな?このところ急に寒くなっていますから、皆様ご自愛くださいませ。

北方領土」進展なし、対話継続を確認…日露首脳会談
小泉首相プーチン露大統領は21日、首相官邸で約2時間半にわたって会談し、北方領土問題について、双方が受け入れられる解決策を目指して交渉を継続することを確認した。ただ、北方4島の帰属を確認した上で平和条約締結を目指す日本と、平和条約を締結した後、色丹、歯舞の2島を引き渡すと主張するロシアの歩み寄りは見られず、共同声明の発表は見送られた。
また、大統領は首相に来年の訪露を招請し、首相も承諾した。両首脳はエネルギーやテロ対策など12の文書で合意した。(YOMIURI ON-LINE 2005年11月22日)

小泉首相プーチン大統領の日ロ首脳会談、マスメディアは相変わらずの論調で「北方領土に関する進展なし=首脳会談は失敗」と結論付けたいようです。実際の首脳会談の場で小泉首相がどのくらいの時間を北方領土関係の議論に割いたのか分かりませんが、北方領土関係の問題はとりあえず今のままで実害はないので、何の進展が無くても全く問題ないと思います。むしろ、北方領土問題のために他の議題が議論できなかったとすれば、そちらの方が問題でしょう。

結果的には石油パイプラインの太平洋ルート建設の具体策を詰めることを同意できたり、ロシアと中国の合同軍事演習やロシアの対中武器輸出に対して釘をさすことができたりと、現在日本が必要な成果を得ることができたという点で成功だったと思います。個人的には、合同軍事演習や対中武器輸出に関して、「透明性を与えることは賛成だ。武器輸出は自分たちの責任を十分感じている」とプーチン大統領の言質を取れたことを評価しています。

今年前半の懸念事項であったEUの対中武器輸出は、中国の反日デモの影響で相変わらず解禁されていませんし、今回ロシアの対中武器輸出に対しても日本としての懸念を伝えることができたということは、中国の野放図な軍備拡張に間接的ではありますが、「待った」をかけられたと言えるわけで、日本にとって十分なメリットがあります。小泉首相がロシアへの招待を受けたということをとってみても、日ロ首脳会談は十分に成功したと思います。

それにしても、マスメディアが今回の首脳会談を失敗で片付けたがるのは何か裏でもあるんでしょうか?

読売の社説[日露首脳会談]「『時の利』ない時こそ戦略が大事だ」の「中国との関係を深めるロシアが、米国と同盟関係にある日本との関係改善の優先度を低く置くのは当然だろう。そのような状況の下で日本側が領土問題で焦って動けば、むしろ国益を害する。」なんかは明らかに読み違えでしょう。「日本も、米中露のパワーゲームをにらみつつ、中央アジアやインドなどとの関係強化を図るなど、戦略的な外交を図るべきだ。」ということらしいですが、日本もパワーゲームの立派な参加者であるという認識が決定的に欠けているように思います。

ロシアがアメリカへの対抗上、対中関係を重視するのはある程度やむを得ないにしても、ロシアと中国は長い地続きの国境を接しているわけですから、ロシアにとっては中国を牽制するカードも持っておきたいのが道理で、その観点から日ロ関係はロシアにとっても十分価値のあるカードのはずです。

日本びいきのプーチン大統領が大統領である今のうちに日ロ関係を深めて、お互いが国益のために利用できる関係まで持っていけるかどうかが、極東地区におけるパワーゲームのひとつのポイントになるのではないでしょうか。