聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

私が女系天皇容認に「転向」した理由

女性・女系天皇を容認…有識者会議が一致
小泉首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」(座長=吉川弘之・元東大学長)は25日の第14回会合で、安定的な皇位継承を維持するため、男系男子に限っている皇位継承資格者を女性皇族に拡大することで一致した。
(略)
これまでの検討では、皇位継承者の確保策については、女性への皇位継承を認める案のほか、現行通りに男系男子に限ったうえで、戦後間もなく皇室を離脱した宮家の復活や、現在は認められていない養子縁組などで男系を維持する案もあった。
これに対し、吉川座長は25日、「旧皇族(の復帰)という意見もあったが、現代に受け入れられるかどうかを議論し、ほとんど可能性がないことが分かった」と述べ、有識者会議では賛同を得るに至らなかったことを明らかにした。(YOMIURI ON-LINE 2005年10月25日)

当初、想定されていた方向ではありますが、女性の皇族に皇位継承権を拡大することでまとまりそうです。これまで男系の男子に限定されていた皇位継承権を女性皇族に拡大することは、皇室制度の大きな転換であり賛否両論ありますが、現在の日本や皇室を取り巻く環境を考えれば妥当な結論と思います。

この問題に対する私の現時点の立ち位置は、有識者会議の結論とほぼ同じで「天皇直系優先、兄弟姉妹間では男子優先、従って女系天皇もあり」というものです。もともとは男系による皇位継承の維持を支持していたのですが、最近考えを変えました。「転向」した理由をひと言で言えば男系継承維持論についていけなくなったからです。まとまりませんが、私がついていけなくなったポイントをつらつら書いておきます。

ひとつには「男系継承であった」こと自体が事実かどうかよく分からないことです。「男系継承であった」ことは、今となっては厳密に証明することはできません。私自身は男系継承であったことを疑っているわけではありませんが、仮にどこかにフィクションが紛れ込んでいたとしても、これも証明できません。

つまり「皇室が男系で継承されてきた」ということは「厳然たる事実」というよりは、「そういうことだったとしておく」とか「そういうことだったと信じる」ということに近いように思います。過去皇統が途絶えそうになった際、血の離れた傍系の皇子に継承させたという事例も「歴史書にそう書いてある」という以上の根拠はないはずです。

問題は「事実であったかどうか」ではなく、「みんながそれを事実と思っているか」なのだと思いますが、それを「初代の男性のY染色体(Y1)は、どんなに直系から血が遠くなっても男系の男子には必ず継承されている。逆に女系では同じ男性でも初代のX1染色体を継承している人と、そうでない人が出てくる。長男は継承し、次男は継承していない場合もあり、その逆のケースも考えられる。つまり、女系の男子が皇位を継承した場合には、この人は、もはや初代・神武天皇の染色体を継承していないということになる。(女性天皇容認論を排す 男系継承を守るため旧宮家から養子を迎えればよい)」などと主張されると、ちょっとついていけないなと。

ふたつ目には、男系継承を維持するための対策に共感できないことです。

対策としては、例えば旧宮家の復活だとか、皇室に連なる方の養子縁組だとか、ありえないですが側室制度の復活などが考えられますが、どれもこれも対策の当事者を人間扱いしているようには思えません。歴史上、そのような対策が採られたのは事実としても、同じ対策を今の時代に復活させるのはどうなのかなと。

例えば、当事者である天皇のご意見を聞くべしという意見があります。要は有識者会議が天皇の意向も確かめずに物事を決めるのはけしからんということで、一見天皇のご意見を尊重しているように見えますが、仮に天皇ご自身が「旧宮家の復活は不要。女系継承で構わない」とおっしゃったら男系継承維持派の方はそれを受け入れるのでしょうか?

それに男系継承を維持せんがために旧宮家の方々の人生をむりやり変えてしまおうとする一方で、天皇のご意見は聞くべしというのは矛盾していませんか?

みっつ目には、男系継承維持論を展開する論者に共感できないことです。

男系継承維持を主張するブログで「多くの国民は男系と女系の区別もついていない」というコメントを良く見かけますが、「それを言っちゃあおしまいよ」ってなもんです。気持ちは分からんでもないですが、ご自身の意見に賛同してくれない人間をバカ呼ばわりしては、得られる支持も得られないと思います。

少なくとも私の中では、上のY遺伝子の話とあわせて、男系継承を最優先する意義がほとんど失われてしまうほどのネガティブなインパクトがありました。