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川崎市長選挙 - 両候補者の施策を比較してみた

今週末に川崎市長選挙が実施されます。個人的に関心を持っている市営地下鉄と学校教育に関する阿部候補と岡本候補の施策を比べてみました。阿部さんは現職市長なので川崎市のサイトに掲載されている施策、岡本さんについては彼のサイトに掲載されているマニフェストの施策をそれぞれ引用しました。

● 川崎市営地下鉄について

川崎市営地下鉄については何度も報道されていますが、阿部さんは元住吉接続を武蔵小杉接続に変更した上で、計画を推進するというものです。

市対応方針
現計画(元住吉接続)については中止し、路線を一部変更して武蔵小杉駅に接続する計画で、継続して川崎縦貫高速鉄道線整備事業を推進する。(川崎縦貫高速鉄道線整備事業に関する事業再評価対応方針について)
対して、岡本さんは、地下鉄の代わりにミニバスやコミュニティバスを導入するという方針です。
安全で住みやすく快適な川崎にします(岡本一の重点公約)
交通不便地域にミニバスやコミュニティバスを導入します。市内縦貫方向の低公害・大量輸送機関・地下鉄の整備を望む市民の要望はよくわかります。総合交通体系として、市の財政の状況や市民の意向を十分見極め、市民の意見をもとに慎重に検討します。当然、新たな市民アンケートを実施するなど市民合意ですすめることは必要です。
  • 現在計画中の「地下鉄事業」は、直ちに推進を停止する。その上で、再検討します。きめ細かな交通不便対策等をおこなったうえでも、どうしても建設してほしいという市民の声が多ければ(市民アンケート等を実施)、市の財政状況を十分見極め、検討します
  • 高齢化が進むもとで、「買い物や病院に出かけるのが大変」という住民が増え、身近に乗れるミニバスやコミュニティバス導入の願いが広がっています。しかし現市政は、こうした声に応えようとしません。交通弱者の立場にたって、鉄道駅や病院、公共施設などを繋ぐ交通不便地域への導入は切実な課題です。交通需要調査に基づき、きめ細かく路線を設定します。
  • 駅周辺に駐輪場の設置を鉄道事業者に義務づける条例を検討します。
コミュニティバスについては、市が2年前に行ったコミュニティバス運行実験結果が出ていますが、この結果を見る限りでは例えばオンデマンド運行のように運行形態を工夫しなければ日常の足として使うには苦しいのではないでしょうか。またそれ以前に貧弱な道路(車道も歩道も)をどうするんだ?という問題が顕在化しそうな予感。また、昔の青島都知事のように、スパッと「地下鉄計画廃止!」と言い切れないあたり、ちょっと腰が引けているのかなという印象。市民アンケートの結果、「推進すべし」となったらどうするつもりなんでしょう?

私自身のスタンスは、川崎市営地下鉄を日常の足として使うことはあまり想定できませんが、比較的自宅に近いところを走るので「あれば便利に使える」という消極的な推進派、コミュニティバスになっちゃうと、おそらく直接的な利害関係がなくなってしまうでしょうから、こちらについては中立です。

● 学校教育について

学校教育については、川崎市は今年のはじめに17年度から26年度を対象とする「かわさき教育プラン」を公表し、これに則った施策を進めています。
対する岡本さんのマニフェストは、この教育プランでカバーしきれていない部分の追加施策というイメージでしょうか。

子どもたちの笑顔が輝く、楽しい学校づくりをすすめます(岡本一の重点公約)
小学校低学年から順次「30人学級」を実施します。地震がくると危険な小・中学校の校舎の耐震補強工事を直ちに取り組み、早期(1~2年以内)に完了させます。また、中学校のランチサービス(全額自己負担)を公的な中学校給食に改善します。
  • 川崎では、年間30日以上学校を欠席する小・中学の児童・生徒数が、この10年間で1,7倍になるなど、不登校児の急増が深刻です。子どもによりそう立場で対応を強めるとともに、一人一人が大切にされ、わかる授業、成長できる楽しい学校づくりが求められており、少人数学級の早期実施は急務です。現在、少人数学級は、全国45道府県に広がり、既に実施している長野県や山形県での成果が実証しています。小学校低学年から順次実施します。また、不登校児の「親の会」など、自主的に不登校問題をとりくんでいるグループ等への援助を強めます。
  • 市立定時制高校の統廃合はおこなわず、現在の5校体制を守ります。
  • 地震がくると危険な小・中学校の校舎は、現在64校・120棟もあります。市は、今後5年間かけて耐震補強を行う計画ですが、この間、各地で大地震が相次いでおり、子どもの生命と安全を守り、住民の避難場所確保する上からも、一気に耐震補強・改築をします。約80億円で120棟の耐震補強工事ができます。
  • 川崎市は、今年1月からすべての中学校で、出前弁当の「中学校ランチサービス」を実施していますが、公的補助がなく全額父母負担のため、市も学校給食と呼べないものです。しかも「まずい」「冷たい」「高い」と評判が悪く、全校平均で生徒10人に1人しか利用していません。給食を教育の一環と位置づけ、公的負担もして、生徒に喜ばれる「中学校給食」に改善します。
小学生と幼稚園児の親としては小学校の少人数学級に関心があります。ただ、これはどちらも取り組むとしていますし、30人学級を目指すか35人学級からはじめるかという違いはありますが、両者とも大差ないという印象です。

ただ、財源をどうするかという点がどちらも不透明なのが不満な点です。義務教育に関する費用・財源について、私は「現状の義務教育費国庫負担金制度を維持する意義は無い」、すなわち地方へ財源委譲してもらいたいというスタンスです。これについては、9月に川崎市議会で税源委譲に関する意見書が可決されていますから、引き続き推進してもらいたいと思います。

個人的に関心のある部分だけをピックアップして両者の施策を比較してみましたが、岡本さんは争点を作り出すのに苦労しているなぁというのが正直な印象です。市の財政が苦しい中、福祉回りを手厚くしようと思うと財源の問題を避けては通れないわけですが、岡本さんのマニフェストはそのあたりの説明が苦しいように思いました。