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お気楽金融雇われ人の見聞録

民営化後の郵便事業って、本当に立ち行かないんだろうか?

郵政民営化に賛成・反対を問わず、郵政三事業のうち郵便事業は赤字でジリ貧、だから郵便貯金と郵便保険(簡保)事業からの収益を補填してやる必要があると言っています。本当でしょうか?

郵政公社の16年度の決算はホームページで公開されていますが、郵便事業に関する損益計算書や営業原価明細(PDF)を見ると、郵便事業の収入2兆円に対して、営業原価が約1兆8000億円です。このうち人件費が約1兆4000億円を占めており、収入に対する人件費の割合は実に7割を超えています。

これに対してヤマト運輸17年3月期の決算(PDF)によれば、総収入に対する人件費の割合は5割未満となっているのと比べると、雇用形態などの違いがあって単純な比較はできないのかもしれませんが、いかにも人件費が大きいという印象を持たざるを得ません。

郵政民営化の反対派は、約24000局ある郵便局のうち4分の3、約18000局が赤字で、その赤字の郵便局を支えているのが郵便貯金業務等の黒字であると説明していますが、赤字の郵便局に占める人件費の割合はどうなっているのでしょう?

個別の郵便局の採算については濃淡あるのでしょうが、郵便事業全体としてみれば人件費を1割削ることによって約1400億円もの収益余力が生まれるわけですから、収益構造の改善余地はかなり大きいと言えそうです。人件費をカットするからといって、別に従業員のクビを切る必要はありませんから、ユニバーサルサービスだって維持可能なはずです。民間の企業が「雇用を維持する」という美名の下通ってきた道でもあります。

こう書くと郵政民営化が必ずしも必要ではないという結論を導き出せそうですが、問題は「現在の公社のままで、人件費の1割カットなどの対策を講じることができるのか?」という点でしょう。

この点について、私は非常に懐疑的です。何といっても「民営化後にあっても公務員の身分を保証しろ」などというJRやNTTの職員が耳を疑いそうな要求が通ってしまう状況なわけですから。実際、郵便事業の16年度の人件費は、前年度より増えているわけですから、外部からの収益プレッシャーが格段に弱い公社のままで人件費削減が可能と思う方がどうかしています。

従って、私の結論は郵便事業は単独で採算を取ることは可能、但し公社のままでは経営改善のインセンティブがあまりに弱いので、結果としてジリ貧に陥ることは避けられない」としておきます。郵政民営化に反対する意見でも、人件費の削減に触れた意見が無い(少なくとも私が見聞きした範囲では)ところを見ると、このあたりが民営化反対論のアキレス腱なんですかね?