聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

ロシア兵を雇って防衛力をアップしよう! by大前先生

経営コンサルタント大前研一氏が、nikkeibp.jpのサイトSAFETY JAPAN 2005で「『産業突然死』の時代の人生論」というコラムを連載されています。今日アップされた第4回目の「庇護者としての“国家”が解体する!」は刺激的なタイトルに釣られて読んでみましたがかなり香ばしいです。ぜひ読んでみてください、頭がクラクラすること請け合いです。

何が香ばしいって、「ロシア人を傭兵として雇用すれば、日本の外交上の安全は高まる」という発想が凄すぎです。ロシアの兵隊を傭兵として雇えば人件費が節約できる上、能力的には平和維持活動だけでなく治安維持活動に踏み込んだ活動もできると断じています。
日本は予算的には世界第2位の軍事大国になっている。しかし、実際の軍事能力はお世辞にも2位とはいえない。イラクに派遣している自衛隊員には、危険地手当てが1日10万円も出る。これに対して、ロシアの兵士の月給はわずか100ドルだ。1日の危険地手当て分で、ロシアの兵士が約1年間雇える計算になる。であれば、ロシアの部隊を雇って彼らを派遣した方が安い。それに、現在の平和維持活動だけでなく、能力的には治安維持活動に踏み込んだ活動も可能だ。
何といっていいのか言葉に詰まりますが、仮に自衛隊の軍事能力が世界第2位でないとして、ロシア兵を雇えば治安維持活動が可能になるという根拠は何なんでしょう?私は自衛隊イラクサマーワで平和維持活動に従事しているのは、自衛隊の能力うんぬん以前の問題で、国会で定めた法の縛りに服しているからだと理解していたのですが、大前先生によればそれは自衛隊の軍事能力不足によるのだそうです。ずいぶんと自衛隊に失礼な話です。

大前先生の暴走はさらに続きます。
ロシアはいま、兵隊を保持するだけの予算がなくて困っている。私だったら、ロシア兵士に対して今の給料の3倍は出す。それでも月給わずか3万円だ。中には実戦経験のある優秀な兵士もいるだろう。日本が“ロシア最大の公的部門”を肩代わりすれば、プーチン大統領だって雇用が保て、軍事費も削減できるから感謝されるだろう。もちろん、ロシア兵士からも感謝される。アメリカだけでなく、ロシアに対しても「思いやり予算」をつけて、しかも「日本の守りを頼む」と契約すればいい。そうすれば、「アメリカ一辺倒」という中国の日本に対する偏見もなくなり、日中関係にも変化が出てくるだろう。
…え~と、なぜにわざわざロシアを引きずり込む必要があるんでしょう?大前先生は日本を旧東西ドイツよろしく分割したいとおっしゃるのでしょうか?そりゃ日本を半分くれてやればプーチン大統領だって大喜びでしょう。でも日本の中に入ってくる軍隊はアメリカだけで十分ですから。

最近の彼のテーマは「ボーダーレス」だそうですが、日本の防衛を「ボーダーレス」化するのであれば、バランスをとる上でロシアや中国、北朝鮮だって防衛をボーダーレス化する必要があるとおもいます。でも彼のコラムには、そのあたりのバーターの発想は伺えません。日本だけがお人よしにも防衛をボーダーレス化しても、食い物にされるだけだと思うのですが、大前先生はそのあたりどう考えているんでしょう?何も考えていないんだろうなぁ…orz