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お気楽金融雇われ人の見聞録

郵便貯金銀行の融資業務への進出

郵貯銀、投融資業務を段階解禁・まず協調融資など
政府は郵政民営化に伴い2007年4月に発足する「郵便貯金銀行」の投融資業務を段階的に解禁する方針だ。まず証券化商品への投資を認め、持ち株会社郵貯銀株を市場放出する段階で大企業などへの協調融資も可能にする。株式売却が進めば個人ローンも容認する。焦げ付く危険や民間との競合が少ない分野から解禁し、国債運用に集中する収益源を多様化する狙いだが、公的関与を残しての投融資拡大には、地域金融機関などから「民業圧迫」との批判が出そうだ。(NIKKEI NET 2005年6月15日)
民営化された郵便貯金銀行が持つ巨額の資金をどこで運用するかという話。

最近の郵便貯金の利回りは、民間銀行の預金金利とほとんど違いが無いようです。以前は、建前上は財政投融資という運用先があったことから、国の機関である郵便貯金の利回りが民間銀行の預金利回りを上回るという不思議な現象が起きていましたが、さすがに自主運用が始まってからは民間銀行の金利水準と変わらない水準に収まってきました。

現在の運用は日本国債中心になっているはずですが、国債の運用だけでは、現在の郵貯金利を維持していくだけでもかなり大変なはずです。なぜかと言えば、国債はリスクが無い代わりに本来であれば利回りも当然低いはずだからです。今回の話は、貸出やその他いろいろな運用手段を持つ民間銀行に比べかなり不利な状況を改善しようということだと言えます。

ただ国債以外の投資をするといっても、いきなり株式への投資ばかりを増やすわけにもいかないでしょう。まずは証券化商品への投資やシンジケートローンへ参加することで、信用リスクの管理や貸出審査のノウハウの蓄積を図るというのは極めて妥当な道筋だと思います。

郵貯銀行に投融資業務を解禁することが民業圧迫につながると懸念している金融機関もあるようですが、心配しすぎのような気がします。逆に、そんなよちよち歩きで投融資業務を始める郵貯銀行に簡単に負けるようであれば、郵貯銀行の民営化が無くてもいずれ淘汰されてしまうでしょう。

それに民営化して株式を市中流通させるからには、郵貯銀行だって図体がでかいだけで安泰であるとは言えません。すでに郵政民営化を実現したドイツでは、ドイツ銀行(ドイツ最大の民間銀行)がポストバンク(ドイツの郵貯銀行)を買収する意向を示しています。
ドイツ銀行、他行買収の用意がある─頭取=独紙
ドイツ銀行のヨゼフ・アッカーマン頭取は、14日付のドイツ経済紙ハンデルスブラットとのインタビューで、同銀行が他行を買収する用意があると述べるとともに、リテール業務でのライバルであるポストバンクを買収できれば依然として戦略的な意義があるという見解を示した。(ロイター 2005年6月14日)
もしかすると、日本でもメガバンク同士の合併・統合に乗り切れなかった三井住友銀行あたりが、すでに郵貯銀行の買収を視野に入れているかもしれません。

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郵政民営化法案骨子-なんか問題あるのか?(2005年04月05日)