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お気楽金融雇われ人の見聞録

ローン・プライシング・コーポレーション日本進出の意味

LPCが日本に新拠点、ローン債権情報の専門サービスを展開
英ロイターの子会社で、ローン債権市場の専門情報を配信するローン・プライシング・コーポレーション(LPC、本社ニューヨーク)は1日付で東京に初の業務拠点を開いた。今後、メガバンクなどを中心に拡大が見込まれる日本の協調融資(シンジケートローン)市場で新規顧客の獲得を目指す(ロイター@nikkeibp.jp 2005年6月2日)
最近、日本国内の貸出案件では、ひとつの銀行だけで大口の貸出を引き受けるのではなく、複数の銀行で案件を分散して引き受けることが流行っています。これを協調融資(シンジケートローン)といいますが、協調融資を行うことで銀行は貸出が焦げ付くリスクを小さくすることができ、また協調融資をアレンジした銀行は主幹事として参加した銀行から手数料を取ることが出来ます。

金利が長く続いているため金利収入の増加が見込めないメガバンクは、手数料収入の増加を目指して協調融資の組成競争を繰り広げています。その名の通り、貸出債権の値付けを専門とするローン・プライシング・コーポレーションは、この市場の広がりに目をつけて東京に進出してきたわけです。

記事の中で興味深いのは、LPC日本代表の後藤氏が「今後はローン債権をセカンダリーマーケット(流通市場)で取引するニーズも拡大すると判断している。」と話している点です。これまで日本における貸出債権の流通市場といえば、所謂ハゲタカファンドによる不良債権の買取であるとか、逆に優良企業向けの貸出を中心に組成した証券化商品が中心で、中堅・中小企業向けの貸出債権の流通市場というのは無いに等しいと言って良い状況でした。

最近、この状況は変わりつつあり、少し前に東京三菱銀行が貸出債権の流通市場創設を目指して債権の値付け業務を始めるとの記事が出ていました。貸出債権の流通市場のマーケットメーカーとなることで市場の拡大を目指すとか。後藤氏の発言もこの動きを睨んでのものだと言えそうです。

貸出債権が、株式や債券(国債)などと同じように流通市場で取引されるようになるとどうなるのでしょう?

まず銀行などの金融機関は、通常の貸出業務に加え、株式や債券の運用と同じような感覚で貸出債権の運用を行うようになると思います。自分の銀行が持つ不採算の債権を売却し、高採算の債権を購入することで貸出ポートフォリオの採算性を向上させることが出来ますし、貸出先を分散させることでリスクを軽減させることも可能です。

運用額が大きくなってくると、貸出債権の運用の巧拙が金融機関の業績を左右するようになるかもしれません。金融機関のやることは、ヘッジファンドとほとんど同じと認識される時代がくるのかもしれません。