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お気楽金融雇われ人の見聞録

ITERはフランスに建設することになるかも

日本とEUで延々綱引きを続けてきたITER建設地の誘致問題だが、最終的には日本が譲ってEU(フランス)に建設するのかなという気がしてきた。
もちろん、確たる根拠があるわけではないが、ここ1週間程度の動きを見ると日本が譲歩する方向で動き始めたように見える。
ITER:誘致で日本EU会談 7月政治決着で合意
日本と欧州連合(EU)が誘致を競う「国際熱核融合実験炉」(ITER)の建設をめぐり、EUの「内閣」である欧州委員会のポトチュニク委員(科学・研究担当)が12日、中山成彬文部科学相と同省で会談した。
EU側は、日本が示していた誘致条件とほぼ同じ内容を提示した。誘致できなかった側への優遇措置ではこれまで、日本案の方がEU案より相手に配慮した内容だった。双方の条件が並んだことで、両者は7月の主要国首脳会議(サミット)までに政治決着を図ることで合意した。(毎日新聞 2005年4月12日)
そう思う理由のひとつ目は、日本とEUの間で7月までに政治決着を図ることで合意した点。
昨年末の段階では、日仏それぞれが誘致できなかった側に提示した優遇措置(日本で実験炉を建設するのであれば工事発注の一定割合をフランスの建設会社に発注するというもの)は、日本の方がよりフランスに配慮した内容だった。日本側は、それを根拠のひとつとしてフランスへの譲歩はまかりならんと主張してきた。

ところが、今回のEU側の譲歩によってお互いの条件が揃ったことによって、日本が譲歩することが一方的に損になるという状況は消えた。また、EUに譲歩した場合、日本が実験炉の建設費用として支出する額と建設受注によって受取る額が差し引きでプラスになる可能性が出てきたので、フランスに譲歩しても国内的に言い訳できる状況になってきたと思う。ただでさえ、ITERは金食い虫といわれているから、文部科学省としても実は渡りに船と思っているんじゃなかろうか。

これを裏付けるかのように、合意を持ち帰ったEU側も、これまでの単独建設も辞さない強硬姿勢をあっさり撤回し政治決着を目指すことで一致しているところも何だか臭う。

理由の二つめは、日本国内でもITER実験炉の建設予定地である青森県六ヶ所村への見返り(?)として、MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)の工場を建設することが決まった点。
MOX燃料工場の立地、青森県知事が同意表明
青森県三村申吾知事は14日、日本原燃(本社・青森県六ヶ所村)が計画している商業用としては国内初のMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)工場の立地に同意したと発表した。
三村知事は会見で、「安全確保を第一義に、地域振興に寄与することを大前提に受諾する」と述べた。この後、建設予定地の六ヶ所村の古川健治村長とともに、基本協定書案を原燃の児島伊佐美社長に手渡した。同案は全12条からなり、県と村が立地に協力し、原燃は地域振興対策に協力することや安全対策を講じることを柱としている。(YOMIURI ON-LINE 2005年4月14日)
使用済み格燃料の再処理工場と核融合技術の実験炉では、目的が全く違い引き換えにする性格のものではないはずが、地元にカネが落ちるという点だけを捉えれば代替可能と考える人がいても不思議ではない。青森県知事もはっきり「地域振興への寄与」を求めているし。

最後にもうひとつ気持ち悪いなと思うのは、EUが6月末に解禁を予定していた中国向け武器輸出が延期されそうになっていること。

もちろん、延期の背景には今回の中国の反日デモがあることは間違いないとは思うが、実験炉をEUへ持っていくことによって得られる余剰の建設受注額の分だけ武器輸出解禁の時期を遅らせることで、とりあえず日米の顔を立てるという判断なり取引があった考えることもできそうだ。

以上、全くの妄想ですが、ITERはフランスに建設することになるんじゃないかなと控えめに予想しておきます。


[関連投稿]
国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致先決着は越年へ(2004年12月20日)