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お気楽金融雇われ人の見聞録

新銀行東京の奥ゆかしい事業計画

4月1日に華々しく開業した新銀行東京はえらく奥ゆかしい銀行だったようだ。
新銀行東京、未公表の「事業計画」 出資依頼企業に説明
東京都が1000億円を出資して1日開業した新銀行東京が、公表している事業計画「新銀行マスタープラン」とは別に「事業計画書」を作り、出資を募る企業に配っていたことが20日、わかった。マスタープランより収益計画を低く見積もった内容を記載している。都新銀行設立本部は「様々なシミュレーションの一つの数値」としているが、これまで「マスタープラン以外の事業計画はない」と説明していた。 (asahi.com 2005年4月20日
そもそも新銀行東京は、開業後3年間で経常利益の黒字化を達成し、総資産は地銀中位行並みの1兆6000億円、融資・保証残高は9300億円を達成するという事業計画(マスタープラン)を都議会に提出している。朝日新聞の記事によれば、公表している事業計画とは別の事業計画を作っていたということだが、色々と条件を変えたシミュレーションを行って複数の事業計画を作ること自体はおかしなことではない。

おいおいと思うのは、出資を募る企業に配った事業計画がマスタープランより収益計画を低く見積もっていたという点。都から仰ぐ出資は元をただせば都民の税金なので堅めに見積もった事業計画で最低限の投資利回りを約束する一方、銀行としては内部でさらに意欲的な事業計画を作り公表計画を上回るリターンを目指すというのなら理解できなくもない。

でも新銀行東京は、朝日新聞の記事が事実だとすれば、奥ゆかしくも全く逆のことをやっているわけだ。公表計画より控えめな計画で出資を募るというのもすごい荒業だが、見せかけだけの実現性の低い収益計画をもって都の公的なカネを引っ張るというのも相当な荒業だ。公共事業なんてそんなもんだというツッコミはさておき、こういうことをしちゃまずいだろう。

もうひとつおいおいと思うのは、公表された計画より低い収益計画を見せられて投資する気になる企業が良く存在するものだという点。そんな計画で出資を募る側も募る側だが、出資する側も出資する側だ。この間のニッポン放送株争奪戦の時も、市場価格より明らかに低いフジテレビの提示価格でTOBに応じた企業がいくつもあったが、期待する収益を得られないことが明らかなのに投資なり資産売却なりを決断してしまう発想が正直理解できない。

日本振興銀行の木村社長も同士として大々的にa href="http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2005/04/post_bed1.html"エールを送っているように、新銀行東京は少し前に開業した日本振興銀行ともども既存のメガバンクなどに対するアンチテーゼとして設立された銀行なわけだから、資本主義のルールをきっちりと遵守して、だらしないメガバンクの模範とならなければいけないだろう。公共事業の延長線みたいな感覚ではまずいんじゃないの?


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