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お気楽金融雇われ人の見聞録

土佐くろしお鉄道の事故は安全システムの実装に問題あり

高知県土佐くろしお鉄道宿毛駅で発生した特急列車の駅舎突入事故。
怪我をした乗客の皆様や亡くなった運転士の方にはお見舞い申上げます。

事故から5日ばかり経過して、だんだんと事故発生時の状況が判明しつつあるが、事故の原因を考える上でポイントになりそうなのは次の4点。
  • 非常ブレーキをかけていた形跡はなし、ただ緩いブレーキをかけていた跡はある
  • ATS(自動列車停止装置)の速度照査装置は駅の160メートル手前と列車の停止位置の2ヶ所に設置、故障はしていなかった
  • 列車は駅に時速70キロメートル以上で進入した
  • 事故当時、運転士は突発的な何かで気を失うなど運転不能の状況にあった可能性がある
問題は「時速100キロメートル近くも出る列車が走る線路のどん詰まりの駅の速度照査装置が、駅の手前160メートルの位置にしか設置されていない」ということ。乱暴に言い換えれば、土佐くろしお鉄道宿毛駅は、「駅の160メートル手前の地点までに、『運転士が』160メートルで止まれる速度まで減速していなければ、列車が駅に激突しても構わないと言う前提で運用されている駅」ということになる。これってATSの実装としてはヒトの力に頼りすぎで問題がありすぎ。もう少し速度照査の段階を増やして、極端な話運転士が突然亡くなってしまっても安全に止まれるようにATSを実装しておかなくてはまずいだろう。

線路の途中にある駅であればスピードを出しすぎて止まれなくても、まぁリカバリーは可能と思うが、宿毛駅のようなどん詰まりの駅では停止位置できちんと止まれなければ、即事故発生なわけで、どんなケースでも列車を停止させるための安全対策を取っておくのが安全管理の基本だと思うがどうか。今回のようなATSの設置方法では、安全対策になっていない、設置しているだけでカネの無駄遣いといわれても仕方がないだろう。

またそもそもの問題点として、土佐くろしお鉄道は98年にも別の路線で追突事故を起こしているようだから、経営陣の安全意識に根本的な問題があるのだと思う。第3セクター鉄道のご多分に漏れず、財政難から苦しい経営を強いられているという現実があるようだが、早期復旧よりも安全対策の全面見直しを優先すべきだろう。
県の十河清・企画振興部長が同日、現場と中村市にある土佐くろしお鉄道本社を訪れ、同社では新谷正雄社長と面会。十河部長によると、新谷社長に対し、「車両や設備の安全点検と社員の健康管理、安全運行の研修を徹底し、県民の信頼を取り戻してほしい」とし、安全運行へ緊急の対応をとるように申し入れた。
十河部長は「県西部の振興に土佐くろしお鉄道は必要。維持するために財政面を含めて支援する方針だ」と県として、支援する考えも示した。(asahi.com
親元の高知県がこんな認識では、またいつか同じような事故を起こすことになるんじゃないだろうか。地元の人だって応援したくとも命が惜しくて乗れやしない。


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