聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

裸の王様ソニー

ソニーが昨年12月に発売したPSP、販売当初から品薄状態が続く一方で、コントローラーのボタンが戻らないという不具合があるのではという指摘が相次いでいる。これに対してSCE久多良木社長は、
「それがPSPの仕様だ」、久多良木SCE社長がゲーム機不具合騒動を一蹴(nikkeibp.jp)
「これが、私が考えたデザインだ。使い勝手についていろいろ言う人もいるかもしれない。それは対応するゲームソフトを作る会社や購入者が、この仕様に合わせてもらうしかない」
「使用する液晶画面はこれ以上小さくしたくないし、PSP本体もこれ以上大きくしたくなかった。ボタン位置も狙ったもの。それが仕様。これは僕が作ったもので、そういう仕様にしている。明確な意思を持っているのであって、間違ったわけではない。世界で一番美しいものを作ったと思う。著名建築家が書いた図面に対して門の位置がおかしいと難癖をつける人はいない。それと同じこと」
と応えたそうだ。

彼は既に裸の王様になってしまわれたのですね。
「難癖をつける」という表現がその事実を雄弁に語っている。richstyles氏の指 摘の通り、ボタンの不具合とデザインの妥当性は全く別問題。にもかかわらず、仕様だからと強弁する久多良木社長にはそこが見えていない(あるいは敢えて見ないようにしている)ようだ。

PSPの評価は久多良木社長が下すのではなく消費者たるエンドユーザーが下すものであり、不具合が事実とすればリコールするのが当然であろう。「顧客との信頼関係を根底から揺るがす方策は採るべきではない。最低でも、信頼関係を築こうというフリだけでもするべきなのだ。選択リコールでも良い。「問題だ」と認識するユーザーからの返品・無償修理を受け入れても良いではないか。」という切込隊長氏の意見は全く正論である。

久多良木社長のこの姿勢はSCEというソニーの一子会社の社長の個人的な独善性に留まる話ではなく、ソニー全体が独善的な空気に支配され、裸の王様と化しているということを端的に表していると思う。その結果は既に顧客離れとして顕在化しており、2005年3月期の連結営業利益が従来予想を500億円下回るという発表や就職人気ランキングにおけるソニー人気の急低下に繋がっているのだろう。

イニシアティブはソニーではなく消費者にあるということを早急に再認識しないと、NHK海老沢会長が視聴者の受信料不払いに抗しきれず会長を辞任したり、長年リコール隠しを続けてきた三菱自動車が販売台数が激減して苦境に陥ったりしたケースと同じ道をソニーも辿りかねないと思う。今回の一連の状況を見ていると、ソニーが舵を切りなおすまでに残されている時間はあまりないと思う。


[関連投稿]
PSPリコール(2005年2月23日)