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お気楽金融雇われ人の見聞録

エアバスとボーイング

1月18日に航空機製造のエアバスが世界初の総二階建て大型旅客機A380のお披露目を行った。既に年間の航空機受注・引渡し件数でボーイングを上回る同社は、A380を投入することで、ボーイングのジャンボ機B747のマーケットも奪って、トップの座を確実にする作戦のようだ。
対するボーイングは、B747を上回る大型機の投入ではなく、搭乗人員200~250人程度の中型機で高燃費の旅客機7E7でエアバスに対抗しようとしているらしい。

泥酔論説委員氏が「エアバス 世界最大旅客機お披露目」で説明されているように、両社の戦略の根底には「航空会社のコスト削減を以下に実現するか」という問題意識があることは間違いな いと思われるが、そのアプローチは片や巨大旅客機による大量輸送、片や燃費の向上と対極をなすものとなっている。

両社の戦略の違いはどこから来ているのだろうか?
The A380 Revealed
The show told, through a storyteller projected onto a vast screen, how the A380 has become a reality thanks to the Airbus policy of listening to its customers and then applying innovative skills and expertise to make their wishes for their dream aircraft come true. Four giant human figures, representing the cultures of France, Germany, Spain and Britain paraded on stage. A flying machine represented Man’s romantic desire to fly as it has manifested itself through the centuries.
エアバスによるA380のお披露目会レポートでは旅客機が人類の「飛ぶ」という夢を実現したものであると述べており、エアバスは旅客機に 対して実にロマンチックな捉え方をしている。
The Boeing Company 2003 annual report
Responding to the overwhelming preference of airlines worldwide, Boeing has focused its new airplane development efforts on the Boeing 7E7, a super-efficient commercial airplane that applies the enabling technologies developed during the feasibility study for the Sonic Cruiser. The airplane will carry 200 to 250 passengers and fly 7,800 to 8,300 nmi, while providing dramatic savings in fuel use and operating costs. Its exceptional performance will come from improvements in engine technology, aerodynamics, materials and systems. It will be the most advanced and efficient commercial airplane in its class and will set new standards for environmental performance and passenger comfort. Entry into service is scheduled for 2008.
一方で、ボーイングは高燃費の旅客機が新しいスタンダードになると述べているように、旅客機といえども経済合理性を考えるステージに 入ったという捉え方をしているようだ。

ヨーロッパ人がロマンチストである一方、アメリカ人が合理的であることが戦略の違いに表れたように見えるが、そうではなく、「航空機 という移動手段」に対する両社の考え方の違いがそれぞれの戦略に表れているという見方もできるように思う。

つまり、船舶や鉄道、自動車など航空機に先行する交通手段が登場してからのこれまでたどってきた歴史を考えてみた場合、ハード面では 、登場当初は当然ながら性能が悪いものが、次第に性能が向上し輸送スピードや輸送人員などが向上するとともに高燃費や低騒音などとい った効率化を実現してきたといえる。
一方、旅行などでこれらの交通手段を利用する際のサービスなどのソフト面では、登場当初は一部の富裕層が使うものという前提に立った 贅を尽くしたサービスが提供されることが多いが、普及とともにサービスも大衆化し、効率化、簡略化されるというプロセスをたどってき ている。
これは、例えば新幹線が登場当初は食堂車をつなぎ、(当時としては)速いスピードと贅沢な車内サービスを用意していたのに対し、現在 の新幹線はスピードが更に向上した一方で食堂車が廃止されるなど車内サービスが無いに等しい状態に簡略化されたことに典型的に表れて いるように思う。

こうして見ると、両者の戦略が全く対極をなしているように見えるのは、航空機がまだぜいたく品としての地位を保っているという認識に 立ち「優雅な空の旅」を提供しようとするのか、航空機が既に大衆化したという認識に立ち「より効率的な航空移動手段」を提供しようと するのかという航空機の歴史に対する位置づけの違いからくるものだと整理することができそうだ。

エアバスボーイングのどちらの戦略に軍配が上がるかは分からないが、航空機が船舶や鉄道、自動車などと同じような道をたどるとすれ ば、時代を先取りしているのはボーイングの方かな?