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お気楽金融雇われ人の見聞録

西武鉄道グループ再編案

西武グループ経営改革委員会が作成中の西武鉄道グループの再編案が明らかになった。
コクド分割、西武と合併・グループ再編で改革委検討(NIKKEI NET 2005年1月15日)

具体的には、グループの中核会社コクドを「旧コクド」と「新コクド」に分割、新コクドと西武鉄道が合併するというもの。合併会社は、融資銀行団のデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)と投資ファンドからの出資を受けて、旧コクド、すなわち堤前会長の影響力を排除する方針とのこと。

西武鉄道株の上場廃止の時に、西武が再上場を果たすためには少なくとも次の3つのハードルを越える必要があることを指摘した。
  1. コクドと西武鉄道の間の資本関係の整理
  2. インサイダー取引疑惑の究明と再発防止策の実施
  3. (堤前会長に保有株式を放出させる場合)安定株主の確保
今回の再編案によって、1.のコクドと西武鉄道の資本関係については整理がつくことになる。また、3.についても堤前会長からは株式の放出を受けず銀行団と投資ファンドの出資を仰ぐことにしたため、既存株主の持分が希薄化することを無視すれば形の上では一応の決着はつく。本来は新たに出資を仰ぐ前に、結果的に経営の監視を怠った株主の責任を減資などの形で果たすことを検討すべきだろうが、今回は西武側がそもそもの株主構成を偽っていたことが原因であるから、一般の株主は株主責任をある程度免責されるという考え方はとり得ると思う。

問題は2.のインサイダー取引疑惑である。そもそも、今回の事件のきっかけとなった個人名義株の虚偽記載について、西武鉄道は、「一部担当者しか知らず、現経営陣は認識していない」と説明してきたが、経営改革委員会の事務局長を務めていた池田敦常務が関与していたことがわかり、実際には組織ぐるみで虚偽記載を行っていたことが明らかになっている(池田常務は事務局長職を辞任)。さらに、堤前会長も虚偽記載の事実を公表前に知っていた可能性が指摘されている。そうなってくると、西武鉄道株の大量売却に堤会長が全く関与していなかったと考えるのは難しく、虚偽記載の事実を知った堤前会長の指示の下、各方面への西武鉄道株売却が行われたのではないかと考える方が自然だろう。

それにしても、こういう不祥事を起こす企業というのは、後でばれることがわかっていながら、どうして最初は組織ぐるみの関与を否定しようとするんだろうか?
…実際のところは、「ばれないだろう」「ばれても隠し通せるだろう」という程度の甘い見通ししか建てられないから、ルールを逸脱しそうなところでブレーキがかからないんだろうなぁ。


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