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ヒーローものゲームが子供の攻撃性を増加させる?

悪者が暴れまわるテレビゲームより、かっこいいヒーローが敵を倒すゲームの方が、むしろ子どもの攻撃性を高める可能性があることが、お茶の水女子大の坂元章教授らのグループ研究で明らかになった。 (YOMIURI ON-LINE 2005年1月7日)
神奈川県や新潟県などの小学5年生592人を対象にアンケートを実施、1年後に追跡調査を行った結果で、知的だったり、見た目がかっこよかったり、魅力的な特徴を持つ主人公が登場し、攻撃するゲームでよく遊んでいた子供は攻撃性に関する指標である「敵意」が上昇していたのだそうだ。

…そもそも「敵意」などというものをどうやって評価しているのだろうか?仮に「敵意」の評価が可能だとして評価方法は妥当なんだろうか?正義感の強い子供も「敵意」が高いと評価されたりしないんだろうか?

などなど疑問は尽きないが、いずれにしろすんなりと納得できる結論ではない。

今回の論文を発表した坂元教授はこれまでもテレビゲームの影響に関する研究をしておられるようで、自身のホームページで論文をいくつか公表している。2001年9月の論文「テレビゲーム、インターネット、ロボットなどの相互作用メディアの使用が人間の心理的および社会的発達に及ぼす影響」ではテレビゲームと暴力性の関連について分析をしている。

この中で教授は、テレビゲームと暴力性について、以下のようなことを指摘している。
  • テレビゲームは暴力性を高める場合がある。中でもアクションゲームやシューティングゲームはその効果が高い。
  • ゲームの中では、暴力をふるうことが(ゲームクリアや得点アップのような形で)賞賛されるため、暴力を振るうことが正当化されやすい。
  • テレビゲームの影響は、女子より男子に強く出る。
  • テレビゲームは、ユーザーとの間に相互作用性を持っているため、その影響力が強い。
  • 最近テレビゲームの影響力が強まっているのは、新しいテレビゲームの現実性が高まっていることが一因。
論文では「テレビゲームをやる→暴力性が高まる」という因果関係がと結論付けており、今回の研究もこの論文の結論を踏まえたものとなっている。しかし、教授は同じ論文の中でテレビゲームと社会的不適応や学校不適応の関係についても分析しており、こちらの分析では高校生以下の子供についてはテレビゲームの使用が社会的不適応を引き起こす因果関係は認められず、もともと社会的不適応な子供がテレビゲームで遊ぶようになるという逆の因果関係があると結論している。

だとすれば、同じような推論がテレビゲームと攻撃性、暴力性との間にも可能ではないか?すなわち、テレビゲームをやることで攻撃性や暴力性が高まるのではなく、たまたま攻撃性や暴力性が高くなった子供がテレビゲームを好む傾向が高いというような因果関係はないのだろうか?

子供の頃テレビゲームにどっぷり浸かっていた身としては、テレビゲームと暴力性や攻撃性の間に因果関係は見出せないと思うのだが…。