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お気楽金融雇われ人の見聞録

産業再生機構によるダイエー支援決定

産業再生機構ダイエーの支援を正式決定した。
再生機構、ダイエー・ミサワ支援を正式決定(NIKKEI NET 2004年12月29日)

再生計画では、ダイエーの特色だった「(店舗などの)自社保有」「事業多角化・拡大路線」「全国展開へのこだわり」「低価格路線への過度の依存」の4点を否定して、食品スーパーを軸に再建を進めるとか。報道されている計画のポイントを見る限りでは、金融業界の人間が金融面に焦点を当てて再建計画を作るとこうなるだろうなぁ、という「いかにも」な再建計画になってそうだ。

ダイエーは、これらの特色を推し進めることで大きく成長した反面、これらにこだわりすぎて金融面、財務面で行き詰ったのは事実だから、金融面のリストラを行うのは正論だし、当然ではある。ダイエー再建のスポンサーとしてイトーヨーカ堂やイオン、ウォルマートなど小売・流通の錚々たる企業が名乗りを挙げているのも、ダイエーの規模などを考えれば当然のことだろうとは思う。何年かして振り返ってみれば、ダイエーは経営危機を脱し、小粒ながら健全な食品スーパーに変身を遂げ、どこかの小売・流通グループの一チャネルとして再生を果たしているかもしれない。

ただ、この再建計画はこれまでのダイエーを全否定し、解体した上でライバル企業に買い取らせる計画なわけで、やむをえないこととは言え、ダイエー内部の人間にしてみればやるせないだろうなぁと思う。これで従業員のダイエーという企業に対するロイヤリティや再生に向けたモラールはがた落ちとなってしまうだろう。ダイエーという看板は残っても、ダイエーの社員としての誇りを持って働くことができるようになるには再生してからも長い時間が必要だろう。

そうしてみると、行け行けどんどんで会社を急成長させる経営者よりは、多少成長が遅くても会社を破綻させない経営者の方が高く評価されてしかるべきなのだが、現在の株式市場ではどうしても短期的な成長力の方が高く評価される傾向にある。大胆に財務リストラを実施し、会社をスリムにして再生を図るという企業再生の定石も、結局のところはスポンサーに対して如何に短期的なリターンを実現させうるかという観点から作られているわけで、「従業員が誇りを持って働ける職場」をどう再生するか?という観点は(おそらく)ないがしろにされていると思う。

両者を同時に満足するための再建計画を作ることは不可能ではないと思うが、作成が可能であるタイムリミットはどこかのタイミングに存在しているはず。ダイエーの場合は、残念ながらタイムリミットを超過してしまったのだろう。自力再生が可能なタイミングはあっただろうに、中内前会長をはじめとする経営陣は、それをみすみす逃してしまったわけだ。ダイエーの従業員はそういう点でもやるせなさを感じているだろうなぁ。

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