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国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致先決着は越年へ

国際熱核融合実験炉(ITER)を青森県六ヶ所村、仏カダラッシュのどちらに建設するかを巡る日本と欧州連合EU)の交渉は妥協点を見出せないまま越年する。建設地を譲った側への見返り措置を双方が提案する一方、自陣営での単独建設の可能性を探るなど、譲歩の気配はない。大型事業の行方を決める交渉は年明け早々にヤマ場を迎えそうだ。(日本経済新聞 2004年12月20日朝刊25面)
国際熱核融合実験炉(ITER)の建設地がなかなか決定しない。

ITERとは、太陽の中で起きている核融合反応をエネルギーとして取り出し、利用するために必要な科学的、技術的な実現可能性実証を目的とした実験炉を建設・運用する国際共同プロジェクトで、日本のほか、アメリカ、EU、ロシア、中国、韓国が参加している。

国際プロジェクトとして実験炉を建設することは合意できているが、青森県六ヶ所村とフランスのカダラッシュのどちらに実験炉を建設するかで合意できず、アメリカ、韓国が日本での建設を支持、ロシア、中国がEU(フランス)への建設を支持するという構図で、既に1年以上にらみ合いが続いている。

ロシアはともかく中国がなぜEU支持なんだろうかと思っていたが、日・米・韓対仏・露・中という構図はイラク戦争開戦前の日・米・英・韓対仏・独・露・中の構図とほぼ同じ(ITERではイギリスはEUに属しているが)ということに今更ながら気づいた。日・米・英(・韓)対仏・独・露・中という対立軸は、今後もいろいろな局面で顔を出してくるだろうが、科学研究の世界も国際政治をしっかり反映した構図になっていることは面白い。

日仏の主張は平行線で妥協点が見出せないようだが、日本としては頓挫しかかっているむつ小川原開発での失地挽回を図り、あわせて周辺地域の交通網整備や町おこしにもつなげたいという色気もあるだろうから、EUへの譲歩はしたくともできないのが実情だろう(フランスも事情は同じだろうが)。

そういった裏の事情はともかく、個人的には子供の頃読んだ科学雑誌に「夢のエネルギー」として取り上げられていた核融合エネルギーの実用化に向けての実験がいよいよ始まると思うと感慨深いものがある。日本主導で核融合の実験が進められることを心情的には応援したい。

まぁ、実際にはITERの建設に10年、実験に20年が予定されていることを考えれば、実験がうまく行ったとしても実用化は、次の世代、その次の世代でようやく実現されるだろうから、私個人は恩恵にあずかれそうもないが…。

いいタイミングで核融合科学研究所岐阜県土岐市)が2000万度の高温プラズマを約30分間保つことに成功し、カダラッシュの研究所が持っていた世界記録を更新したというニュースがあった。これをきっかけに六ヶ所村への建設が決まってもらいたいものだ。
「高温プラズマ持続実験で世界記録更新」(YOMIURI ON-LINE 2004年12月17日)


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