聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

日本の安保理常任理事国入りのメリット?

国連の安全保障理事会の改革に関連して、常任理事国の拡大が正式な議題として俎上に上りつつある。

国連のハイレベル委員会の答申では、常任理事国を増加させても拒否権の付与は行わない方針らしい。これに対し小泉首相は、常任理事国に就任した暁には拒否権が付与されることが望ましいとのスタンスを表明している。

筋論としては納得できるものの、個人的には拒否権に拘泥するのは得策ではないと思う。なぜなら、拒否権は既に「抜かずの宝刀」、もっと言えば「抜けずの宝刀」と化しており、仮に日本が拒否権を持ったとしても実際に行使する機会は無いと考えられるからである。

常任理事国の拒否権というと、冷戦時代に米ソが互いに拒否権を発動し、安保理を空転させていた姿が印象に残っている。しかし、対フセイン政権のイラク戦争においては、フランス・ロシアは米英の武力行使容認決議案に対し、拒否権をちらつかせて抵抗したものの発動には至らず、最終的に武力行使を黙認しているように、冷戦が終った現在では、拒否権を持つ常任理事国同士が「直接の」利害対立関係にない限り、実際に拒否権を発動することは難しいと思う。

なぜかと言えば、現在は英米仏は言わずもがな、中国とロシアも既にグローバル経済のずぶずぶな相互依存関係にどっぷり浸かっているため、自国(とその衛星国家群)だけで経済圏を成立させることができなくなっているためである(無理やり成立させても衛星国家群と共倒れになるリスクがある)。拒否権を発動しても逆に経済的に孤立するリスクを抱える可能性があるわけで、現在の拒否権は単なるブラフのためのカードにしか過ぎない。

常任理事国入り云々という話は拒否権にスポットライトが当てられることが多いが、拒否権を持つことに余り意味が無いとすれば、日本にとっての安保理常任理事国入りのメリットとは何だろうか?

外務省のホームページによれば、常任理事国が他の国と異なる点は、とされており、日本としてのメリットは、現在は非常任理事国に選出された時しか安保理に参加できない国際的な安全保障に関する議論に「常に」関与できるという点だろうか。

議論に常に関与するからには、当然その裏返しとして安全保障に対する関与が求められるわけだが、どう対応するのだろうか?

常任理事国入りして更なる国際貢献をという理念を否定するものではないが、報道を見る限りでは常任理事国に入れるかどうかという議論が多く、常任理事国入りすることのメリット・デメリットや、常任理事国入りした後にどのようなスタンスで臨むのか(英米のようにある意味生真面目に問題に取組むのか、フランス、ロシア、中国のように半身で取組むのか、など)という議論が希薄に思える。

現時点では、常任理事国増加案が承認されるか、日本が常任理事国入りできるかどうかも不透明ではあるが、常任理事国入りを目指すこと自体は自民党民主党も一致しているのだから、こういった議論がもう少し国会で審議されてもいいような気がする。


[関連投稿]
国連事務次長がスーダンへの自衛隊派遣に期待感表明(2005年3月8日)