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お気楽金融雇われ人の見聞録

保険の銀行窓販先送り

金融庁は、銀行窓口で取り扱う保険商品の対象拡大について、来春とした追加解禁の目標時期を来夏以降に先送りするようだ。

保険商品の銀行窓口販売の問題は1997年の「日本版金融ビックバン」以来の金融庁の課題だが、生命保険業界が当初から一貫して反対し続けてきている問題でもある。

特に今年3月に金融審議会が「1年後から段階的に解禁し、3年後には全面解禁する」との答申を出して以降、生命保険業界は自民党を巻き込んで反対のキャンペーンを張ってきた。

反対の理由は、表向きは銀行が融資と抱き合わせに保険を販売すると消費者(保険契約者)保護に欠けるというものだ。
銀行等による保険商品の販売については、保険業法により、「保険契約者等の保護に欠けるおそれが少ない場合」に限定されており、保障性商品にまで及ぶ販売対象商品の拡大は、銀行等が有する優越的地位を背景とした販売、医療・健康情報の融資等銀行業務への流用、製販分離の急激な進行に伴う保険制度全般の健全性悪化等の弊害が危惧されるため、認められるべきではないと我々が主張してきた点について、多くの重大な懸念が残るものであります。
(生命保険協会「銀行等による保険販売規制の見直しについて」 2004年3月31日)
しかし、生命保険会社の本音は、引用したコメント中にも触れられている「製販分離の急激な進行」を食い止めたいということにあると思う。

つまり、銀行窓口販売を大々的に解禁することにより、主要な販売チャネルを銀行窓口に奪われ、これまで築いた販売網(いわゆる生保レディによる販売網)が維持できなくなることを避けたいというものだ。

膨大な費用と時間をかけた販売網を維持したい気持ちは分からないでもない。

ただ、アメリカンファミリー生命保険アフラック)が、生命保険の個人保険分野(個人保険と個人年金との合計)の保有契約件数で、2004年9月中間期末に日本生命保険を抜いて首位に立った。日本生命がこの分野で首位を他社に譲るのは戦後初めてだ。(NIKKEI NET 2004年12月2日)」というように、足元の販売力が弱りつつある現状を考えれば、銀行窓口を使っても何でも販売力の強化を図るのが得策ではないかと思うのだが…。

自前の販売網にこだわる生命保険業界を見ていると、銀行の証券仲介業務解禁に反対している間にネット証券に販売チャネルを奪われた証券業界の二の舞を踏みつつあるような気がする。


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