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お気楽金融雇われ人の見聞録

日本振興銀行の苦境

四月に開業し、中小企業向け融資を手がける日本振興銀行は来年一月に臨時株主総会を開く。創設メンバーの一人で、十一月二十六日に懲戒解雇処分を受けた落合伸治氏らが開催を請求したため。落合氏らは株主の立場で現経営陣の解任と新取締役の選任などを求めるという。(12月4日日経新聞朝刊7面)
1990年代後半に銀行の貸し渋り貸し剥がしの被害を受けた「ミドルリスクミドルリターン」の中小企業向けに原則無担保で必要な資金を貸し出すという高い目標を掲げて開業した日本振興銀行であるが、開業から半年経った現時点では、残念ながら華々しい営業成果ではなくスキャンダルが目立つ銀行になっている。

日本振興銀行は、「ミドルリスクミドルリターン」の中小企業向け融資に特化し、ローコスト経営に徹することで高収益性を実現することとしていたが、今のところはその目論見がうまく言っているとはとても言えない。

「ミドルリスクミドルリターン」の中小企業層は間違いなく存在するはずなのに何故こんなことになってしまったのか?

思うに、原因は二つある。
一つめは「既存の銀行に貸出余力が戻ってきたこと」である。
これまで既存の銀行は、不良債権の処理に追われ、新規に貸し出しを伸ばすところまで余裕が無かったのが実態だろうが、ここ1~2年で不良債権処理は、いよいよ出口が見えてきたため、既存の銀行も「ミドルリスクミドルリターン」の市場に殺到している。いい例が大手銀行による原則無担保の貸し出しで、これはまさに日本振興銀行が目指すマーケットを狙い撃ちにするものである。こうなると、営業力で劣る日本振興銀行は苦しい。

二つ目は「金利体系のゆがみ」である。
つまり、現在の貸出金利が企業のリスクを正しく反映したものになっていないということである。本来なら、倒産する危険が小さい企業に対しては低い金利、倒産する危険が大きい企業に対しては高い金利を適用することが望ましい。
しかしながら、数年来続くゼロ金利政策により金利水準そのものが低く抑えられてしまっているため、倒産する危険に見合った金利を適用しづらいこと、そして銀行間の貸出競争が激しくなりつつあることなどから、日本振興銀行は貸出先の企業の倒産する危険に見合った金利を適用できない、またはあるべき金利を適用しようとするために貸出案件そのものを逃してしまっているのではないかと想像できる。

先日、発表された中間決算は、そのあたりの苦しみがそのまま反映されていると言えるだろう。

スキャンダルが続発するのも成績が思わしくないことが原因の一つなのだろうが、せっかく高い理想を掲げて銀行業界へ乗り込んだわけだから、こんな形で志が挫折してしまうのは非常にもったいない。何とか立ち直ってほしいものだ。


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