公益の代表者が自ら人権侵害をしてはいけないと思うんだよね
「取り調べ可視化」全面実施見送り 法務省勉強会
中間報告は「検察庁が受理する刑事事件は年間約200万件と膨大で、取り調べは犯罪現場やパトカー内など取調室以外にも多様な場所で行われる」と指摘。裁判で供述の任意性が争点になる事件は少ないことも考慮すると、全事件の録音・録画は「メリットに見合わない多大な負担やコストがかかり、現実性に欠ける」と結論付けた。
そのうえで、全過程の録音・録画には「報復の恐れなどから容疑者が真実を供述することをためらう」「自分に不利益な真実を供述することのハードルが高くなる」など捜査に与える悪影響の懸念を指摘する意見があることを紹介。
(2010年6月18日 日経新聞)
検察庁が取調べ可視化に必死で抵抗している様子が良くわかる。いろいろ理屈を挙げているがどれも理由になってない。
曰く、検察庁が受理する刑事事件は年間約200万件と膨大
⇒ 大部分は軽微な事件でしょ。
「平成21年版 犯罪白書」によれば、検察庁の新規受理人員は約170万人いるけれど、実際に起訴する人員はおよそ12万人で全体の7%ほど。あとは略式命令が約47万人、不起訴が約97万人、家庭裁判所送致が14万人という状況。
もちろん少ない数字ではないけれど、全部が全部何日も取調べをしなきゃいけないような事案じゃないだろうし、起訴まで至らない事件1件あたりの取調べ時間はどのくらいか明らかにしてもらわなきゃ判断できないよね。
曰く、取り調べは犯罪現場やパトカー内など取調室以外にも多様な場所で行われる
⇒ 今時携帯だって、コンパクトデジカメだって動画を録画できるんですが何か?
だいたい犯罪現場で取調べするときは、証拠にするために取り調べの現場写真とっているんじゃないの?写真は撮るけど、録画はできないってどんだけ?
曰く、報復の恐れなどから容疑者が真実を供述することをためらう、自分に不利益な真実を供述することのハードルが高くなる
⇒ 調書ベースの取調べと比べて何が違うから真実の供述をためらうの?ハードルが高くなるの?牽強付会もいいところ。
曰く、メリットに見合わない多大な負担やコストがかかり、現実性に欠ける
⇒ メリットがあるかどうか判断するのは法務省や検察庁ではなく、我々主権者たる国民。コストに見合わないかどうか判断するのも国民。その国民の人権を守るために必要な手段の一つとして「取調べの可視化」という議論が出てきていることを、検察庁は認識すべき。
個人的には、法科大学院の講義でお世話になった検察官もいるし、組織としての検察庁はショートスタッフの中、正義感に燃えて日々職務に励んでいる人が多いのだろうと思っているけれど、それはそれ、これはこれ。
公益の代表者たる検察官が、自ら人権侵害をしているという矛盾した状況を是認してしまってはいけないと思うんだよね。