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麻生外相の北方領土の2等分案

麻生外相が表明した北方領土の2等分案、実現の可能性はともかく、アイデアとしては秀逸だと思うんだが、すこぶる評判が悪いですな。

【主張】北方領土2等分 麻生外相は何をお考えか
麻生太郎外相が衆院外務委員会で北方領土問題について、択捉・国後・歯舞・色丹の4島全体の面積を日露で2等分する解決案に言及した。外務省は「政府の立場と関係ない個人的考え」としている。しかし問題は国益と国家主権にかかわる重大事だ。
戦後、日本が一貫して訴え続けてきた「4島返還」の大原則を葬り去りかねない意思を、外交の最高責任者が国会で表明したのだ。……
日本固有の4島は他国の領土になった過去はなく、スターリン終戦直後に一方的に不法占拠したことだけが原因の領土問題である。
つまり、問題発生の淵源(えんげん)は、百パーセント旧ソ連(ロシア)側の非にある。双方に非(原因)や特殊な経緯があった中露国境のように、単純算術的、技術的に解決策を探ること自体が理不尽なのである。(産経新聞 2006年12月15日)

北方領土問題の原因がロシア(旧ソ連)側にあるのは確かなので、その意味では4島一括返還が一番望ましい解決策ではあるのだけど、不法占拠から始まった領土問題が平和的、つまり話し合いによって不法占拠側が出て行った事例ってあるのかな?

しっかり調べたわけではないけれど、領土が国際間で移動するのは、
(1)軍事力でもって直接占拠する場合(北方領土竹島
(2)軍事力を背景とした「話し合い」で領有権を変更する場合(三国干渉時の遼東半島
(3)金で領土を売買する場合(アラスカ半島
がほとんどで、何の見返りもなく話し合いだけで領土が移動したことはないんじゃないだろうか。

例えとしては不適切かもしれないけれど、私人間で発生する土地や建物の不法占拠の解決のために、立ち退き料を握らせて出て行ってもらうようなものだろう。不動産の不法占拠の場合だって、立ち退き料を渡さずに粘り強く交渉する手はないわけじゃないけど、実現するかどうかもわからないし、どのくらいの時間がかかるかもわからない。立ち退き料を渡す方はいやいや渡すケースが圧倒的だと思うけど、「迅速」に「現実」の解決を目指すのであれば、割り切らざるを得ないだろう。

そう考えると、ロシアと戦争やって取り返そうというならともかく、そんな非現実的なオプションをとり得ないのであれば、現実の解決のためにはロシア側の譲歩を引き出すためには何らかの見返り(言い訳)を用意してやる必要があると思う。まぁそれにしたって、ロシアに北方領土を手放す意思が多少なりともあることが前提なわけだが。4島返還「だけ」を主張して先方の譲歩の余地をなくしてしまうのは、それこそサンフランシスコ条約締結時の全面講和論のように解決を遠ざけるだけだと思う。