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お気楽金融雇われ人の見聞録

消費者金融と債務者保護の悩ましい関係

消費者金融に融資制限求める声相次ぐ・金融庁懇談会
金融庁は27日、消費者金融など貸金業に関する懇談会を開き、融資ルールの抜本的な見直しに向けた議論を始めた。出席者からは、規制が有名無実化している過剰貸し付けの防止や、利息制限法の上限金利を超える融資の制限を求める声が相次いだ。今後、返済が滞った債務者へのカウンセリング制度や広告規制など利用者保護についても議論する。
顧客の返済能力を超える過剰な融資は貸金業規制法などが禁じている。ただ、罰則規定がないうえ基準があいまいで、行政処分された事例もない。懇談会では、1人当たりの借入総額などを制限する方向で見直しを検討する。出席者からは、「消費者ローンだけでなく銀行融資も含めたルールを作るべきだ」との意見も出た。
ただ、顧客の借り入れ情報は、消費者金融信販などが業界ごとに信用情報機関を設けて管理している。一部を除き共有されていないため、データベースの統合や規制の方法を議論する。(NIKKEI NET 2006年1月27日)

いわゆる多重債務者の保護をどうするか?という問題。これまでの懇談会の議事要旨を見ると多重債務者に対する教育やカウンセリングをどうするかという議論がメインだったようなのですが、制度的にひとり当たりの借入限度額を設けるような話が出てきているんでしょうか?さらりと書いてありますが、実現までのハードルは相当高いでしょう。

まず、債務者ひとり当たりの正確な借入残高を把握することが(借り入れた本人も含め)困難です。業界をまたいで借入残高をまとめるといっても、消費者金融会社や銀行からの借入、クレジットカードの使用残高をまとめる程度では不十分で、例えば証券会社の信用取引の枠、商品先物取引や外為証拠金取引の枠なども借入残高に準ずるものとして残高をまとめる対象に含める必要があるでしょう。

また、首尾よくひとり当たりの借入残高を業界横断的にまとめられたとして、今度は国が一人当たりの借入限度額を定めることと「借りる自由(いわゆる自己責任)」との関係をどう整理するかという問題があります。単に多重債務者の自己責任とすればすむ問題ではないはずなんですが、多重債務者に対するカウンセリングの話が出てくるのは、国が借入限度額を設けることの難しさの裏返しでもあるわけです。