聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

想像力が欠けているからこういうことになる

なぜ採点ソフトを内製化する必要があったのでしょう?

フィギュア全日本、男子は高橋大輔が優勝
国際スケート連合(ISU)は昨シーズンから、新採点方式の全面導入に踏み切った。日本連盟もこれに対応するため、昨年の全日本選手権から、新採点を運行するための国産のコンピューターシステムを導入。今季は改良を加えたソフトを作成、国内の試合で使用している。ISUのシステムを導入すると高価であることも理由の一つという。
ミスはISUシステムでは備わっている、同じジャンプを複数回跳ぶことをルール違反と判断し、自動的に得点から除くプログラムを導入していなかったために起きた。だが、高橋がNHK杯で同様の違反をするなど、この種のミスはこれまで、国際大会でもしばしば起きているものだ。
しかも、プログラムの開発にあたった日本連盟フィギュア委員会は全日本合宿で、選手たちにこのルールについて再三注意を与えている。小野長久フィギュア部長は「そういうことは起きないだろうと考えていた」と話し、連盟の危機感の薄さを浮き彫りにした。(YOMIURI ON-LINE 2005年12月25日)

国際スケート連合が用意した採点ソフトが高価だったので内製化したとのことですが、単純にソフト(とおそらくハードウェア一式)を買うのと、一から開発するのを比較して後者に軍配が上がるのが不思議です。

これが例えばERPソフトを導入するときに、外部商品を導入するにはカスタマイズの手間や費用が膨大になるので、いっそ内製化しようというのであれば、わからなくもありません。でも「フィギュアスケートの採点」というある意味標準化・定型化された作業を行うためのシステムについて、内製化の方が有利と判断した根拠って何でしょう?

内製化する過程で、ヒューマンミスによって設計ミスやプログラムバグが発生するかもしれないとは考えなかったのでしょうか?当然考えてないんでしょう。

挙句に国内開催の国際大会でもしばしば発生していたミスについて、口頭で何度か通達したから「そういうことは起きないだろうと考えて」、本来入れておくべきモジュールを入れ損なっていたというのですから、あいた口がふさがりません。

「ブレーキをかけずに終端駅に突進してくる列車はないだろう」と考えてATSの設置が甘かった土佐くろしお鉄道、「制限速度を何十キロも超過してカーブに突入する列車はないだろう」と考えて何百人という死傷者を出したJR西日本、「そんなに取引が集中することはないだろう」「そんな明らかに間違った注文が出るはずがないだろう」と考えて立て続けに二度もシステム障害を起こした東証など、今年もヒューマンエラーに対する想像力の欠けた組織がいろいろと問題を起こしました。

今回のスケート連盟の不手際もヒューマンエラーに対する想像力が欠如していたという点ではまったく同根です。